オススメの漫画を高校生記者のちえさんに紹介してもらいました。
「リア充」できる今の平和さを実感できる
『風光る』渡辺多恵子著(フラワーコミックス、390円=価格は1巻、税抜)
本作品の主人公「神谷清三郎」は実は女子。家族を討幕派に殺され、仇討ちのため、武士になることを決意。恩人の沖田総司に会うために、壬生浪士組(後の新選組)に入隊します。そこで目にするのは、男だらけの厳しく非情な世界……。
美しいタッチにより、幕末の残酷な社会を甘酸っぱい恋愛を通して描いた、この異色の少女漫画に、私はとても熱中しました。20年以上連載が続いた名作です。
江戸末期の日本。そこには身分、出身による格差や憎悪が蔓延し、毎日のように暴動が起こっていました。武士たちの運命を知っているだけに、登場人物の恋愛模様は見ていてつらくなりました。
しかし、愛する人のために、女を捨てて武士として生きる選択をした主人公や、死にに行く夫を見送る女性たち。愛や家族、忠義の狭間で揺れる武士たち。それぞれの姿に尊さを感じずにはいられません。
灰色の青春を送る私にとって(不本意ですが)、「リア充」な男女は疎ましくもうらやましい存在です。しかし、自由な恋愛ができる今の日本は、本当に平和なのだとこの作品を読んでしみじみと実感しました。
「推し」の歴史人物を見つけて
私はこの作品を通して、当時の文化にまつわるさまざまな豆知識も得ました。江戸と京都で布団の形が違うこと、「ヤバい」は江戸言葉だったということなど。作者の渡辺先生が、作品に登場する家の間取りや、家具にまでこだわっていると知ったときは驚きました。そして、改めて先生の時代考証に対するこだわりに感服してしまいました。
当時は確かに格差のある社会だったと思います。しかし、そこには矜持を持って信念を貫き、文化を守ろうとする人々がいたのだと思います。
彼らの生き方に触れ、自分もいつか同じように真っすぐな人間になりたいと思いました。
ちなみにこの作品では、実在した歴史上の人物が個性たっぷりに描かれています。私の推しは原田左之助です。2.5枚目に描かれています。自分の「推し」歴史人物を見つける、というのも、この漫画の一つの楽しみ方ではないでしょうか。(高校生記者・ちえ=3年)