スウェーデンの王立科学アカデミーは2019年のノーベル化学賞を、リチウムイオン電池を開発した旭化成名誉フェローで名城大教授の吉野彰氏(71)ら3氏に授与すると発表した。3氏の業績を、情報化社会を支え、地球温暖化の解決にもつながる成果として高く評価し、「私たちの生活に革命をもたらし、人類に偉大な貢献をした」とたたえた。
日本人27人目の受賞
日本人のノーベル賞受賞は27人目で、化学賞は2010年以来8人目となる。
共同受賞は米テキサス大のジョン・グッドイナフ教授(97)とニューヨーク州立大のマイケル・スタンリー・ウィッティンガム特別教授(77)。グッドイナフ教授はノーベル各賞を通じ最高齢受賞。
スマホにも太陽光発電にも
吉野氏はウィッティンガム、グッドイナフ両氏の研究を基に、特殊な炭素材料を使った組み合わせ電池の基本構成を確立した。ソニーが1991年に初めて実用化、小型軽量で高性能のためスマホやノートパソコンなどモバイル機器の普及に貢献した。また再生可能エネルギーの出力変動を補うため風力や太陽光発電の拡大にも役立つなど、用途は多岐にわたる。
「失敗しないと成功はない」
吉野氏は大阪府吹田市出身。小学校4年のころ、英国の科学者ファラデーの著書「ロウソクの科学」を読み、科学に興味を持った。科学への興味を失わず京都大工学部に進んだが、入学当初は考古学に熱中、太古の時代にロマンを感じて遺跡発掘にも熱心だったという。受賞決定後、教授を務める名城大学の講義では、自身の経験から「失敗しないと絶対に成功はない」と学生に語った。
授賞式は12月10日にストックホルムで行われ、賞金900万クローナ(約9700万円)を3氏で等分する。