八王子東高校(東京)の有志団体「有志熱気球」は、90年代後半から活動を続けている。高校生が数年かけて製作した熱気球を、校内外で飛行させるのが主な活動内容だ。メンバーに熱気球の魅力を聞いた。(文・写真 中田宗孝)

地上1000メートルの世界へ

月2~3回、校内中庭で無人の熱気球を飛ばすなどの活動を行っている。ソフトボール部のマネジャーを掛け持つ坪倉凜乃さん(3年)をはじめ、21人いるメンバーの多くは他の部活と兼部。熱気球に乗って体感する空の世界は格別だ。「(校外で同校の熱気球に乗り)上空約1000メートルまで行きました。絶景なのはもちろん、飛行機とは違って、風を直に感じるので、まさに『飛んでる~』って(笑)」(今村亜耶香さん・2年)

文化祭2日目は無人の熱気球をあげた。来場者と共に空高く舞い上がる様子を観賞

女子高生3人の発案がきっかけ

1996年、当時の女子生徒3人が「人が乗れる熱気球を作ろう!」と思い立ったのがきっかけで発足した。その思いは卒業までに叶わなかったが、彼女たちの夢は在校生に託され、有志生徒による熱気球製作が始まった。

機体の設計は、表計算ソフトのExcelや三角関数を駆使して行う。0号機となる無人熱気球の製作、同機でのテスト飛行などを経て、99年12月、その見た目から「青いたまねぎ(型熱気球)」と命名された3人乗りの熱気球が完成した。

2000年、栃木県の渡良瀬遊水地にて、この1号機による自由飛行を成功させた。同校によると、高校生が自作した熱気球での初めての有人飛行だという。現在、最新の機体となる無人気球「地球(型熱気球)」(15年完成)をはじめ、これまでに6機の熱気球を製作してきた。

無人熱気球「地球」と有志熱気球のメンバーたち

文化祭の名物企画に

活動には、かつて有志熱気球のメンバーだったOB・OGの協力が不可欠。「活動日にはOB(OG)が参加してくれます。先輩たちに熱気球の飛ばし方や、必要な技術を教わるんです」(坪倉さん)。気球の球皮となる耐熱性のある布の縫製は工業用ミシンを使う。膨らます際は道路工事で白線を固める時に使用するバーナーで熱気を送る。「熱気球の活動に参加したばかりの頃は、そんな気球の飛ばす方法の一つ一つに驚きました」(今村さん)

球皮の中に扇風機で空気を送り込んだ後、バーナーで熱気を焚き、気球を膨らませる

毎年9月の文化祭「しらかし祭」では、校庭で有人・無人の熱気球をそれぞれ飛ばす。同校文化祭に訪れた来場者も有人の熱気球に乗って飛ぶことができるため、名物企画の一つになっている。「熱気球の操縦は、免許(熱気球操縦士技能証)を持っている卒業生が行います。文化祭では、お客さんを乗せたゴンドラから校舎の屋上が見えるくらいの高さまであげます」(坪倉さん)。今年の文化祭(9月7・8日開催)では、約80人が搭乗した。

文化祭初日には、有人熱気球「青いたまねぎ」に来場者を乗せてフライト(今村さん提供)

目下の目標は、新たな熱気球を作ることだ。「6年後、学校創立50周年を迎えます。それに合わせて完成を目指しています」(今村さん)。熱気球の製作以外にも、材料購入のための資金集めなど課題は多いが、メンバーたちの夢は膨らむ。今村さんは、「『青いたまねぎ』よりも大きい熱気球を作ります! 自分たちの熱気球の知識を後輩たちにしっかり伝えて製作を進めていければ」と、力を込めて語った。

有志熱気球のメンバーたちは、学年関係なく和気あいあいと活動する