7月に佐賀県で行われた文化部の全国大会「全国高校総合文化祭」の演劇部門で、ふたば未来学園高校(福島)演劇部が全国2位にあたる優秀賞の1校に選ばれた。8月下旬には国立劇場で公演も行った。9月7日(土)にはNHK Eテレ「青春舞台2019」で総文祭演劇部門のドキュメンタリーが放送される。(文・写真 中田宗孝)

部員の実際の思いやエピソードを劇にして表現した(8月23日、東京公演リハーサル)

本音で話し合い、思いを紡いだ

上演した「Indrah~カズコになろうよ~」(齋藤夏菜子・同校演劇部作)は、部員それぞれの物語がつまったノンフィクション構成劇だ。東日本大震災や東京電力福島第一原発事故も描かれ、被災地の福島県で高校生活を過ごす「リアル」を観客に投げかけている。自分の過去のこと、家族のこと、部のみんなで楽しんだ雪合戦……。舞台上で部員たちの思い出が紡がれていく。

「僕たちは本音で話し合う機会を何度も設けました。そこで、部員たちが語った出来事の中から、みんなで考えられて、深く掘り下げられるエピソードを作品にしているんです」(部長の森﨑陽君・3年)

森﨑君は「変わるって何?」と、部員たちに問いかけた話し合いが印象深いという。「部活や学校生活を過ごす中で、自分がどう変わっていったんだろうと……。他の部員の意見を聞きながら、自分自身のことも一番頭を使って考えました。話し合いの後、言葉にできない余韻も残りました」。このエピソードは劇中に盛り込まれた。

帰国した留学生との絆、作品が証に

タイトルの「Indrah」とは、昨年8月から約半年間、演劇部員として活動したマレーシアからの留学生インドラ・デラガナダンさん(当時2年)のことだ。彼女も同作のキャストの一人だった。森﨑君は、「インドラは誰にでもフレンドリー。頑張って日本語を覚えてくれて、帰国直前はほぼ日本語で会話してました」と話す。

インドラさんが帰国したため、脚本の変更を余儀なくされた。「インドラの代役を立てるのは違うと思いました。彼女が居なくても、僕たちとの絆を感じられる作品にしたんです」(森﨑君)。完成したのは、インドラさんが去ったその後の物語。舞台でのキャストたちの会話を通じて、インドラさんが「ここにいた証し」が届けられた。

留学生のインドラさん(中央)(18年12月、「東北地区高校演劇発表会」学校提供)

心の成長が演技につながる

全国の舞台は「全力を尽くし、100%の出来でした」(森﨑君)。優秀賞に選ばれたことは、インドラさんにも伝えたという。「別れ際、『離れても応援してる』と言ってくれていました。結果を報告するととても喜んでくれました」(副部長の鶴飼夢姫さん、3年)

鶴飼さんは、演劇部での活動を通して、内面の成長を感じている。「中学までの私は自分の主張を人に押し付けがちでした。部のみんなと濃い時間を過ごし、相手の気持ちを考えて行動する自分になれました」。心の成長は演技につながる。「(鶴飼さんは)部員の中でも特に演技力が高い。今回の舞台では、少ないせりふの中でも存在感がすごくて、舞台の上で輝いて見えることがあるんです」(森﨑君)

部長の森﨑君(右)と副部長の鶴飼さん
【NHK Eテレ「青春舞台2019」】

放送日時

・9月7日(土)22:00〜23:00 ドキュメンタリー

・9月8日(日)14:30〜15:40 最優秀校上演(逗子開成高校「ケチャップ・オブ・ザ・デッド」)

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