東京大学は2019年度入試から初めて「出題意図」を公表する。選択式問題など解答が一つに限られる問題については解答も公表するが、文章で答える記述式問題などは解答例も公表しない。出題意図の作成にあたっては翌年以降に受験する人への「メッセージ」となるようにしたいという。

大学入試の情報公開をめぐっては、昨年6月に文部科学省が各大学に出した通知で、解答の公表を原則として求めつつ、「一義的な解答が示せない記述式の問題」などについては解答例か出題意図を公表することを要請していた。19年度入試から解答などの公表を決めた大学は少なくない。

選択式問題などは解答も公表

東大は3月下旬頃に一部の問題の出題意図を公表する。残りの問題については4月下旬頃に出題意図を公表する。出題意図は科目ごともしくは設問ごと。いずれも問題とともにホームページに掲載する。選択式問題や短答式問題のように解答が一つに定まる場合は、原則として解答も公表するという。

東大は、一般入試の合格発表にあわせて出題意図の公表について説明した(2019年3月10日、東大本郷キャンパス)

「間違った勉強の仕方」を問題視

東大の入試問題では数学や理科で式や考え方を書かせたり、国語や地理歴史で文章で答える記述式問題が多くを占めたりするなど、「解答が一つに定まらない問題」が多い。東大の福田裕穂理事・副学長(入試担当)は、採点にあたっては「解を出すプロセス」を重視しているという。「(大学側が)記述式の解答を出すと(受験生が)絶対的な解として覚えてしまう。(解を覚えるのは)東京大学が求める学生像と違ってしまう」と話す。記述式問題の解答例の公表を求める声は学内にほとんどないという。一方で東大入試に向けて「間違った受験勉強の仕方」をしている高校生がいる可能性を問題視しているという。「大事なのは高校生、受験生がどう勉強するか。東京大学の入試は難しいというネガティブなメッセージが伝わっている可能性がある。東大の入試(に込めた)メッセージを伝えたい」

入試のチェック「非常に時間をかけている」

国が入試問題の解答などの公表を大学に求める背景には、昨年、入試の出題ミスが相次いで発覚したことがある。福田理事は東大入試のチェック体制について「非常に時間をかけてさまざまなことをやっている」という。「採点も非常に時間をかけている。入試のチェックも非常に時間をかけて、いろんなところにチェックポイントを設けている。できる範囲のことは時間をかけてやっている」。出題意図や一部問題の解答などの公表は、ミス防止より、受験生へのメッセージとしてとらえているという。「意図をみて、(受験生が)良い方向に勉強してほしい」と話す。