戦略練り、伝える司令塔
赤と青のボールを6球ずつ投げ合って得点を競う「ボッチャ」は、リオデジャネイロ・パラリンピックで一躍日本でも注目されるようになった。唐司(とうのし)あみ(東京・府中けやきの森学園2年)は、昨年の世界大会で日本代表に選ばれた有力選手で、高校では主将も務める。
3人一組で戦うチーム戦。緊張感が漂う中、チームメートが1球を投じるごとに、唐司は真剣な表情を浮かべる。相手と自分たちのボールの位置状況を見極めて、どんな戦略を取るべきか。主将は自らが投げるだけでなく、棋士のように次の一手を決める司令塔としての役割も担うからだ。
コミュニケーションが鍵
高校1年の時、パラアスリート発掘事業に参加したのがきっかけで競技を始めた。「リオパラリンピックで日本が銀メダルを獲得したのを見て、私もやってみたいと思いました」。週2回の学校の部活だけでなく、週1回はクラブチームで約3時間の練習に取り組み、親とともに個人練習にも励むなど、競技に懸ける思いは人一倍だ。「腕の可動域が広がってきましたし、一投ごとの時間の使い方も以前よりも焦ることなく考えながら投げられるようになりました」
実力を上げるとともに芽生えているのはキャプテンシーだ。「主将は昨年のボッチャ甲子園から務めています。作戦を考えるとともに、分かりやすく伝わるよう工夫するのは難しい。だからこそ、同じチームの仲間としっかりとコミュニケーションをとる大事さを感じている毎日です」
試合を見ていると、唐司は投げ終わったチームメートのところに向かい、常に声掛けをしている。それは次に投げるボールの戦略を一致させるためで、チーム全体でも成長していく意欲を感じる。
「今後取り組んでいきたいことは、アプローチやヒットの確率を上げることと、チームとしての時間の使い方やみんなで作戦を共有できる意識を高めていきたいです」
今夏連覇がかかるボッチャ甲子園とともに、個人戦である日本選手権出場に向けてさらに実力を磨いていくはずだ。(文・写真 茂野聡士)
- 【ボッチャってどんな競技?】
- 「ジャックボール」と言われる白いボールに向けて、2チームが制限時間内で赤と青のボール6球ずつを投げ合って、近くにあればあるほど得点となる。カーリングのように、相手ボールを弾くなど1球ごとに立てる戦略が試合のカギを握る。また、ジャックにボールを当てて的の位置を動かせるため大逆転も起こり「相手の得点になる場合になるし、自分たちが大量得点を取れる場合もあって、最後まで展開が白熱するのが楽しいところです」(唐司)