全国から選ばれた文化部の高校生が集う第42回 全国高校総合文化祭「2018信州総文祭」が8月7 日から5日間、長野県内で行われた。28部門に全国約2万人の生徒が参加。演劇、郷土芸能、日本音 楽の上位入賞校は、8月25、26の両日、国立劇場(東京)で「優秀校東京公演」を行った。(文・写真 中田宗孝、幡原裕治)

大正時代のサッカーなでしこたちを熱演

 

演劇部門では、丸亀高校(香川)演劇部が、顧問の先生と部員の共作による「フートボールの時間」を上演し、15年ぶり2度目となる最優秀賞(文部科学大臣賞)を受賞した。

演目は、大正時代にはかま姿でフートボール(サッカー)に興じる女学生らの青春群像劇。同校の前身の一つ、丸亀高等女学校の女学生が明治時代からフートボールに取り組んでいた史実を基に創作した。劇中では「(球蹴りなんて)女性らしくない」という批判的な声にあらがう少女たちの葛藤も描かれ、物語に深みをもたらしている。「100年前の事実を伝えるだけでなく、大正時代を生きた活発な女子高校生の姿を、今を生きる自分たちと重ね合わせてお客さんに考えてもらえるよう、気持ちを込めて演じました」(部長の長井ゆいさん・3年)

丸亀高校演劇部の2人

 

合言葉は「富士山になる!」

劇中のひとコマ

3年前に出場した全国高総文祭では優秀賞。全国1位(最優秀賞)に届かず悔しい思いをした経験から「富士山(日本一)になる!」が、部員たち共通の合言葉・目標になった。

昨年7月から始まった今作の稽古中には、部全体の士気が下がる時期や、練習に遅刻する部員がいたことも。そんな時は、部員全員でのミーティングを繰り返し、本音の意見をぶつけあい、意識統一をはかった。「学年関係なく、なぜ演技に迷いがあるのか、富士山を目指すのがどうして怖いのかといったことを話し合いました。最後は『みんなで頑張っていこう!』って、気持ちが吹っ切れるんです」(長井さん)

積み重ねてきた練習が実り、上演作は全国1位に輝いた。長井さんは、「日本一になれなかったら私はそこで引退。でもまだ、(優秀校東京公演に向けて)みんなと楽しく笑って演劇ができる。そんな、今までと変わらない『私の日常』を過ごせていることが幸せです」と、喜びをかみしめた。

劇中のひとコマ