松戸高校では、選択授業として全国でも珍しい「演劇」を取り入れている。ジャージー姿の生徒たちが力強い声を発しながら汗だくで教室を動き回る授業風景は、まるで運動部のトレーニングのようだった。(文・写真 小野哲史)

2年時に「演技基礎」を選択した生徒は、ストレッチやエアロビクス、発声といった基本レッスンに取り組む。その経験を生かし、3年時の「演技実習」では、年2回の発表会を目標に俳優とスタッフ(音響・照明など)を経験する。

初めは恥ずかしそうにしていた生徒も、やがて大きな動きや発声ができるようになる。担当の見上裕昭先生は「内気な生徒に活発な役をやらせると、意外と大胆に演じてくれる。周りの者も、その生徒の新たな魅力を感じるようです」と語る。

雲雀史隆君(3年)は「憧れている声優みたいな表現者になりたい」と話す。演劇の授業で学んだ表現力を、違う道で生かしたいと考えている生徒も多い。真剣なまなざしで授業を受けていた本多千月香さん(2年)は、将来は保育関係を志望する。「子どもたちの前で何かをやるときに、演劇の経験が生きるはず」と力を込める。

演劇部にも所属する佐々木瑠奈さん(3年)は「演技の経験が少ない人は、予想とは違った動きや表情をする。それが勉強になる」と話す。

演じる恥ずかしさを乗り越えたとき、生徒たちは新たな自分と、他人の違った魅力を発見する。一回り大きく成長できる選択授業だ。