今年、高校1年生ながら水泳の日本選手権(4月)女子200メートル自由形で2位に入り、世界水泳選手権(7〜8月、ロシア・カザン)代表入りを果たした持田早智(千葉・千葉商大付1年)。中学2年生から頭角を現し、数々の中学新記録を樹立。高校生となった今年も、勢いそのままに記録を伸ばし続けている強さの秘密を聞いた。(文・田坂友暁、写真・中村博之)
男子と競り合い飛躍
中学2年時に全国中学校水泳大会で50メートル、100メートルの自由形2冠を達成、翌年の同大会では、100メートルと200メートルの自由形で中学新記録(当時)を樹立するまで記録を伸ばす。そして、高校生になって迎えた今年4月の日本選手権。200メートル自由形決勝で前半から積極的に攻め、1分58秒69の自己ベストで2位に入り、世界水泳選手権代表の座を射止めた。
飛躍の背景には、中学1年時から受けている、西崎勇コーチ(ルネサンス幕張)の厳しい指導がある。普段は1回の練習で6000メートル前後を泳ぐ。泳ぎ込みの時期には8000メートル以上のこともある。
「同じくらいの自己ベストを持つ男子選手と毎日競り合いながら、一本一本集中して勝つことを意識して練習しました。負けるのは大嫌いなんです」(持田)
趣味でも高い集中力
わずか数年で飛躍を果たした持田だが、それでも世界の壁は厚かった。
初出場の世界水泳では力を出し切れず、自己ベストから1秒近く遅い記録で予選20位に終わる。
「今年の夏に大舞台を経験して、自分にはまだまだ足りない部分があることを実感しました。今は200メートルをメーンにしていますが、50メートルや100メートル、400メートルでも戦えるオールラウンドな選手になりたいと思っています」
「ジグソーパズルをやり始めると止まらなくなってしまうんです」と、趣味でも高い集中力を発揮するアスリートらしい一面は、勉強にも生きている。普段は練習後、寝る前に勉強をしているが、やり始めると、きりのいいところまでやりたくなって、気づけば1、2時間たっていることもあるという。
最近は新しい趣味を見つけたと話す。「もともとジュースとか甘いものが好きなんですけど、西崎コーチからジュースをやめろって言われて。それで飲み始めたコーヒーが、今では趣味なんです。砂糖なしのミルク入りなら飲めるようになりました」
無邪気な笑顔を見せてそう話す持田を見ていると、世界を相手に戦うトップアスリートということを忘れてしまう。
東京五輪でメダルを
来年4月の日本選手権で五輪派遣標準記録を突破しなければ、リオデジャネイロ五輪(8月)への切符は手にできない。
「期待は大きいかもしれませんけど、それは気にせず自分のペースで、自分が持てる力を出し切れるような練習を積んで挑みたい。最大の目標は東京五輪でメダルを取ることですが、そのためにもリオ五輪には出たいです」
高いプレッシャーがかかるレースになるが、持田は持ち前の明るさと思い切りの良さで、きっと会場を沸かせてくれるに違いない。
- 【もちだ・さち】
- 1999年7月19日、奈良県出身。千葉市立打瀬中卒業。ルネサンス幕張所属。6歳で水泳を始め、小学6年生の夏に全国大会デビュー。今夏の全国高校総体(インターハイ)では100メートル、200メートル自由形で2冠を達成。165センチ、56キロ。