高齢者が劇の内容をより理解しやすいよう、役名を書いた紙を胸に付けて演じる

東京の5校の演劇部員有志が、高齢者を対象にした時代劇公演を続けている。7年前に始まり、2月と5月の年2回公演する。「水戸黄門」など高齢者の好みを考えた演目は、毎回好評を博している。
(文・大橋哲也 写真・幡原裕治)

高校生らしい演出光る

2月11日に東京・新宿のデイケアセンターで行われた公演には、新宿高校、千早高校、晴海総合高校、暁星中学・高校、日本大学豊山高校から計23人(中学生2人含む)が参加。普段は各学校で活動しているため、全体練習は事前に3回、計6時間しかできなかった。公演前は衣装の準備、作品の時代背景を調べてからの役作りで、いつも慌ただしいという。
 本番前の通しげいこは和気あいあいとした雰囲気で始まったが、開演が近づくにつれ緊張感と演技の質が高まった。

本番では「水戸黄門」「遠山の金さん」の2作品を上演。演者総出の軽快なダンスや派手なチャンバラなど、高校生らしい若さあふれる演出が光った。演技では、せりふが聞き取りやすいよう大声で言葉を発し、手足を大きく動かすなど細かい気配りも見られた。
 上演中、約40人の高齢者は高校生に優しいまなざしを向け、終演後は精いっぱいの拍手とねぎらいの言葉で演技をたたえた。

祖父思い脚本書く

特別な思いで今回の公演に臨んだメンバーがいる。遠山の金さんの脚本を担当した奥田悠仁君(新宿高校1年)だ。「脚本を頼まれたころ、祖父が体調を崩してしまったんです。デイケアセンターの高齢者の方はもちろん、『祖父ならこうしたら喜ぶんじゃないか』と考えながら書きました」

リーダーの國近優希さん(同2年)は「終演後、皆さんに『面白かった』と声を掛けていただき、本当にうれしかったです」。デイケアセンターの所長、赤荻洋さんは「高齢者たちはとても満足しているように見えた。次の公演も期待している」と目を細めた。