制服の上に法被(はっぴ)とエプロンを身に着けた身長151㌢の女子生徒が、重さ約30㌔のマグロを巧みな包丁さばきで切り分ける。高知・高知海洋高校食品コースの藤田由真さん(3年)は、マグロを解体する6代目「ツナガール」としてイベントに引っ張りだこ。12月に学校であったイベントでも実演し、観客から大きな拍手が湧いた。(文・写真 藤川満)

■マグロをPR

同校の食品コースで学ぶ生徒は2年時から缶詰製造実習を始め、マグロの解体も行う。解体技術の最優秀者が女子の場合、ツナガールと命名され、同校の行事や地元のスーパーでのイベントで、マグロの解体ショーを披露して技術や食材をPRする。活動期間は3年時の1年間。男子が最優秀者になった年も「解体担当」の名で活動するが、その年のツナガールは不在となる。

 

初代ツナガールが誕生したのは2003年。当時の呼び名は女子も男子と同様「解体担当」だった。しかし東日本大震災以降、「みんなで、つながっていこう」という思いも込めて、女子の最優秀者が出たときのみ「ツナガールと呼ぼう」と竹中治人教頭が命名した。

■東京と大阪でも腕前披露

藤田さんがツナガールとしてデビューしたのは昨年9月。同校の体験入学イベントでの解体ショーだった。同月には、高知県から地元食材のPRを依頼されて大阪市の中央卸売市場前で、12月には東京・秋葉原でも腕前を披露した。切り分けた身は、その場で販売する。

12 月14 日、生徒が実習で作った製品を販売するイベント「魚河岸かいよう」が同校で開かれ、藤田さんは約30㌔のメバチマグロをさばいた。途中、頭や大きな切り身を持ち上げるたびに、まな板を取り囲んだ約50人の観客から「おー」というどよめきと拍手が起きる。

解体ショーでさばくマグロは、同校の航海コースと機関コースの生徒が航海実習で釣り上げたものだ。この日の解体にかかった時間は約15分。ショーが終わると、ビニールに詰められた切り身を買い求めるため、観客が競うように列をつくった。

■就職先で経験生かしたい

「最初のころは、マグロをボロボロにしてしまいました。今はだいぶ慣れましたが、力がいる作業なので大変。包丁を入れる角度など難しいです」(藤田さん)これまでさばいたマグロは40本程度。コツをつかみ始めたのは20本目くらいからだという。

竹中教頭は「歴代のツナガールの中でもセンスがあり、技術も優れている」と評価する。「人前で解体ショーをやるなんて思ってもみなかったけど、ショーを通じて精神的にも強くなれた」。卒業後は地元のホテルの調理部に就職が決まった。「社会人になっても、この技術を生かしたい」と目を輝かせた。

メモ: 60年の歴史あり 同校の食品コースに所属する生徒は、3年間で水産食品の製造や管理などを学ぶ。2年時に缶詰の制作実習の授業があり、生徒はマグロの解体を教わる。マグロ解体実習は前身の高校から含めて60年ほどの歴史がある。