千葉県立松戸高校演劇部は、千羽鶴作りを通して広島の高校生たちの心の成長を描いた作品「CRANES」を上演する。演じる役の理解、広島弁の習得、意見の衝突など、部員たちがいくつもの壁を乗り越えた末に完成させた。
(文・写真 小野哲史)
役作りに四苦八苦
部長の風見由希子さん(3年)は「役の内面を深く理解できず、どんなふうに演じればいいか悩みました」と振り返る。だが、顧問の小室秀一先生は「役に正解はありません。役というサイコロを与えるのはわれわれですが、それをどう転がすかは生徒たち次第」と温かく見守るだけだった。松原遥さん(3年)は「広島の方言が難しかった。テレビドラマを見ながら勉強しました」と話す。各部員がそれぞれの課題を克服しながら、劇を完成させた。
ただ、昨秋の文化祭や地区大会、県大会は「納得いく出来ではなかった」と風見さん。その後も「何度もみんなで話し合って、お互いの役の特徴や関係性への理解を深めた」(松原さん)。部員同士で意見のぶつかり合いもあったが、1月の関東大会では「終演後は燃え尽きすぎて、何も考えられない状態だった」(風見さん)というほど、すべてを出し切った。
総文祭でも「CRANES」を披露する。関東大会から時間がたち、作品に対する思いが変わってきたことから新しい演出も加わるという。6月には別の作品の公演があったため、そのけいこと並行しながらの準備は大変だった。風見さんは「それぞれのセリフや動きを覚えなければいけないので、切り替えが難しかった」と振り返る。
それでも松原さんは「しっかり役作りをして、本番では笑顔で臨みたい」と意気込む。3年生にとっては集大成となる大舞台の幕が、まもなく上がる。