データネット実行委員会(ベネッセコーポレーション・駿台予備学校共催)による2025年度大学入学共通テストの「歴史総合,日本史探究」の問題分析は次の通り。
― 「菓子の探究」「四コマ漫画」など親しみやすい題材。背景や関連性が重視された。昨年よりやや難化 ―
第1問は「地理総合/歴史総合/公共」の『歴史総合』と共通問題であった。大問数は6で昨年の日本史Bから変更はなく、解答数は32個から33個に増加した。蒙古襲来絵詞などの馴染み深いものから、ミルクキャラメルの広告まで多彩な資料が扱われ、受験生に身近な視点から出題された。資料読解を通じ歴史事象のつながりを考えるものが散見されるなか、踏み込んだ知識や時期判断を要するものも一定量みられ、難易は昨年の日本史Bよりやや難化。
大問数・解答数
大問数は6で昨年の日本史Bから変更なく、解答数は32個から33個に増加した。第1問は『歴史総合』と共通問題であった。
出題形式
文章選択および組合せ形式が中心の出題で、バランスのとれた構成であった。古代の文化作品の図版や近世の石高と年貢高のグラフ、松本清張の年譜など、多彩な資料の読解・解釈を求める問いが多かった。
出題分野
政治史と外交を中心に、分野融合的な問いも含めて、各分野から幅広く出題された。
問題量
昨年の日本史B並。
難易
昨年の日本史Bよりやや難化。
大問別分析
第1問「歴史上における境界」 (25点・標準)
『歴史総合』第1問と共通問題。Aでは国際関係における「境界」、Bでは疫病の流行と「境界」、Cではアメリカ合衆国へ渡った移民が主題として設定された。問8は、各パートでの学習活動をさらに深めるために設定された主題に基づき、主題を探究するための問いと、考察するための学習活動の組合せを選ぶ問題。問いに表現された歴史的事象の時期に注目して判断する力が求められた。
第2問「菓子に着目した探究活動」 (15点・標準)
砂糖や甘味料と話題を拡げ、各時代の貿易に関連づけた出題が多く、時代をさかのぼる展開も特徴的であった。問1では工藤平助が活動した時期を判断し、当時の為政者の政策と結びつけるとともに、資料を正確に読み取る力が求められた。
第3問「大宰府と古代の外交・文化」 (15点・標準)
大宰府に関する遺跡や博物館を見学したワークシートを題材に外交を中心に問われた。問3では「高麗」とされている表記のなかで「渤海」をさしているものがどれであるか、判断することが求められた。4つの資料文の時期判断がポイントであった。
第4問「中世の武士」 (15点・標準)
鎌倉時代の御家人と戦国大名を取り上げ、中世の武士について政治史を中心に出題された。問2では蒙古襲来絵詞の一場面と下地中分に関する資料が扱われた。前者では石塁が描かれていることに着目すれば二度目の襲来時であることが判断できた。後者では資料読解力に加え、リード文にも注意して時期把握することが求められた。
第5問「近世の村」 (15点・やや難)
村掟や浅間山の噴火についての被害状況調査報告書などから、社会情勢と幕府の諸政策との関連を考えさせる問題が出題された。問5では、幕府領の石高や年貢高のグラフにみられる変化の背景を、検見法や定免法の時期に求め、判断することが求められた。
第6問「松本清張の年譜から考える近現代史」 (15点・やや難)
明治から昭和戦後期までの時代が扱われ、当時の新聞記事や松本清張の自伝も用いながら政治史を中心に幅広く出題された。問5では松本清張が描写された長谷川町子の漫画「意地悪ばあさん」を題材に、疑問と調べ方の組合せについてその適否を判断させるものであった。探究学習の手法を念頭においた出題であった。
【参考】過去5年の「日本史B」の平均点(大学入試センター公表値)
- 2024年度 56.27点
- 2023年度 59.75点
- 2022年度 52.81点
- 2021年度 64.26点
- 2020年度 65.45点