「だじゃれ」をこよなく愛する桑田大輝さん(愛知・南山高校男子部2年)は、最年少のだじゃれ伝道師「ダジャレンジャー」だ。これまでに500を超えるオリジナルだじゃれを考案してきた。だじゃれ漬けの日々を送る高校生活を教えてもらった。(文・中田宗孝、写真・本人提供)

「橋の端でブリッジ」会心のだじゃれをインスタで発信

「夏にナッツを食べる」「このラッシー、おいしいらしい」「イタリアに行った。リアリー?」「名古屋でゴーヤーを育てる」

これまで自分で考えただじゃれは500を超えた。自作のだじゃれは、インスタグラムに投稿。会心の一作「橋の端でブリッジ」のような、だじゃれに関連させたネタ写真を付けることで、独自のだじゃれワールドを表現するのが桑田流だ。

自作のだじゃれ「橋の端でブリッジ」。ひらめいた写真の構図のセンスも抜群だ

2014年に発足した一般社団法人日本だじゃれ活用協会から認定を受け、だじゃれの普及活動を行う「ダジャレンジャー(だじゃれ伝道師)」というユニークな肩書を持つ。だじゃれの普及活動にはことさら情熱を注いでいる。

「何もない自分」を変えたい

だじゃれに出会ったのは小学校低学年のころ。児童書やテレビ番組を通じてだじゃれに触れ、お笑い芸人の謎掛けネタにも心踊らせた。「言葉と言葉を掛け合わせてつながっていくのが、すごく面白かったんです」

自らもだじゃれを友人たちに言い始め、小5のときには「クラスのだじゃれキャラ」を確立。「友達が笑ってくれるのがうれしかった。自分から笑わせるタイプではなかったけど、だじゃれが変えてくれました」

「日本だじゃれ活用協会」の認定試験に合格して「ダジャレンジャー46号」になった

中学時代は「学校の成績は普通で部活は幽霊部員」だったという。「勉強や部活を頑張ってる友達と比べて『自分には何もないな……』と沈んでました」。そんな時、だじゃれ好きな自分を思い出した。中3で日本だじゃれ活用協会に「ダジャレンジャーになりたい」と応募メールを送った。「だじゃれが自分の強みになれば。そんな気持ちからの行動だったんです。あとで知りましたが、協会の方も中学生からのまさかの応募に驚いたみたいです(笑)」

複数回の講習を経て、高1の3月、桑田さんは念願のダジャレンジャー46号(人目)に認定された。最年少となるダジャレンジャーの称号だ。「『史上初』とか『最年少』なんて無縁だったので素直にうれしかったですね。だじゃれは僕に自信を与えてくれました」

人間関係を円滑にするツール

だじゃれの魅力は桑田さんいわく、「言葉遊びなので道具もいらないお手軽さ」だ。「会話の中で効果的にだじゃれを使えば、場の雰囲気をよくすることもできる。とっても便利なツールです!」

クラス替えの新学期、初対面のクラスメートとの会話をだじゃれから始め、互いの距離を縮めた経験がある。「だじゃれは人間関係を円滑にしたり、緊張をほぐしたりするときに使えます」

一方、言葉遊びの仕組みが似ている「『オヤジギャグ』とは違う」と話す。「オヤジギャグは場の空気を読まず、言いっ放しの自己中心的なもの。笑いを相手に半ば強要するような感じ。だじゃれは相手を思いやりながらその人の笑顔を引き出すもの。僕は友達の友達くらいまでの身近な世界を和ませるようなイメージでだじゃれを発していきたい」

SNSや課外授業で魅力発信

桑田さんは「『若者のだじゃれ離れ』はかなり深刻(苦笑)」だと嘆く。「僕のまわりの高校生は誰一人だじゃれを言いません。ごくまれに学校の先生がつぶやく程度です」。SNSでだじゃれを発信するのは、若年層の目に留まりやすくするためでもある。「大好きなだじゃれを、僕と同じ若い世代のみんなにもっと使ってほしい!」

7月、名古屋市内でダジャレンジャーの活動として「簡単だじゃレクチャー」と題した課外授業を行った。だじゃれの活用法を楽しく伝え、集まった約20人の聴衆からも好評を博した。

市民が先生になり多様な授業を行う「第35回愛知サマーセミナー2024」に、だじゃれ先生として参加

9月には文化祭のステージ企画で、だじゃれを披露する予定だ。「スベる環境は十分整ってますね(笑)。シーンとなっても『……とかね!』なんて堂々と振るまえばクスッとなるはず。そんな『受け身』の取り方は習得済み」とニヤリ。だじゃれ文化の大いなる発展のため、ダジャレンジャー46号のだじゃれ創作活動は続く。