国際化学五輪で金メダルの吉村耕平君(東京・麻布高校3年)

7~8月に開催された国際科学オリンピックの6分野(数学、化学、生物学、物理、情報、地理)で、日本代表として出場した高校生26人全員がメダルを獲得する快挙を果たした。国際化学オリンピック金メダルの吉村耕平君(東京・麻布高校3年)は、「誰にも負けない科目を作ろう」とオリンピックに挑戦してきた。国際化学オリンピックと学校の勉強の違いになどについて聞いた。(文・山口佳子、写真・幡原裕治)

――国際化学オリンピックを目指したきっかけは?

「中高一貫校に入学して優秀な仲間が多い中で、中2の頃、1教科でもいいから誰にも負けない科目を作ろうと思いました。その頃たまたま親しかったのが化学の先生だったという理由で、化学が特別好きだったわけではありません。中3で初めて挑戦しましたが、予選落ち。高1でもダメでしたが、高2になって1次予選を通過、今回の代表選抜につながりました」

――国際化学オリンピックと高校の化学の勉強との違いは?

「筆記試験は高校の化学よりもずっと難しいです。国際大会では実験もうまくいきませんでした。今回、国際化学オリンピックの勉強をしてみて、熱力学や量子力学などについても高校で教えてほしいと思いました。高校化学では『こうしたらこうなる』といった表層的なことは学べますが、なぜそういう結果になるのかといった理由は教わりません。熱力学や量子力学を学ぶことで、そうした理由がわかり化学の本質に触れたような気がします。国際化学オリンピックに挑戦したことで、化学が好きになりました」

――どんな高校生活でしたか?

「剣道部に所属していました。予選落ちした時にも、剣道部に戻ることでそれほど落ち込まなかったです。同じ学年の仲間がみんな途中でやめてしまったので、後輩たちと仲が良いです。僕がオリンピックに行くことを知って、『すごい』と驚いてくれましたが、残念ながら、自分も挑戦しようという後輩はいなかったです」

――国際化学オリンピックに参加した感想は?

「今年の開催地はアゼルバイジャンでしたが、どこだろう?と思う日本人も多いと思います。ぼくもほとんど知らなかったのですが、実際に行ってみると意外と発展していて、大会が開催された大学もとてもきれいでした。こんな素敵な国なのに、なんで日本に知られていないのだろうと思いました」

――将来は?

「どの分野に進むかはまだ不明ですが、化学をもっと学びたいです」