奈川・立花学園高校の釣り部には20人が籍を置く。放課後は学校近くの管理釣り場で、休日は相模湾で……。魚と格闘しながら一喜一憂し、時には釣れないジレンマに耐えながら、今日も仲間と共に釣り糸を垂らしている。(文・東憲吾 写真・幡原裕治)

創部は1995 年。釣りが好きな顧問の六郷雅弘先生が立ち上げた。昨年度までは女子部員もいたが、現在は男子のみ。部員のほとんどが釣りの経験者で、子どものころから親と一緒に釣りを楽しんできた人、中学時代に釣りに魅せられて一人で魚を追いかけてきた人など経歴はさまざま。石井裕貴君(1年)は「もともと釣りが好きで、釣り部があるから立花学園に入学しました。釣り仲間ができたことが何よりうれしい」と話す。

ブラックバスを狙う

終礼のチャイムが鳴ると、部員たちは制服から私服に着替え、学校から徒歩25分のところにある管理釣り場へ向かう。ブラックバスやトラウト(マス)を放流しているその釣り場が、部員の主戦場。施設の掃除を定期的に手伝う代わりに、格安で使用させてもらっている。10 月から3月までは、ほぼ毎日足を運ぶ。

寒風に耐え ルアー巻く

釣り場に到着すると、部員たちは自分の釣りざおを取り出し、好きなポイントでルアー(疑似餌)を投げ込む。さおの先端を小まめに動かしながらリールを巻き、巻き終えたら再び投げる。「魚の動きを想像しながら、ルアーを動かします。狙った通りに魚が食いつた時が快感です」と部長の多田悠馬君(2年)は話すが、取材したこの日はなかなか釣れない。

寒風に、震える部員も出始めた。飯田天佑君(2年)がボソッとつぶやく。「これが地獄の時間です。今日はダメかなあ」

すると、隣にいた栗田陽平君(1年)のさおがググッとしなった。「強い引きです」。ゆっくりとリールを巻くと、水面に魚の影が浮かび上がってきた。「でかいぞ!」。大きなトラウトだ。サイズを測ると60㌢。自身最高記録を更新した。「大物を釣ると、やっぱりうれしいですね」(栗田君)

これに刺激された多田君は「これからですよ」と気持ちを切り替え、ルアーを変えて再び自分のポイントへ。数分後に40㌢のブラウントラウトを釣り上げた。

釣り仲間は一生の友

釣りの世界は奥が深い

午後4時から7時まで、この日も部員たちは釣りを楽しんだ。唯一、初心者で入部した秋元翼君(1年)は「思っていたよりも、釣りは奥が深い。『俺は何で釣れないんだろう』って、毎日仲間と話しています。それが楽しいんですよね」と語った。

昨年12月14日には相模湾でのカワハギ釣りに出かけた。OBも参加し、おおいににぎわったという。釣り仲間としての関係は、卒業しても続きそうだ。

フライも手作り

フライフィッシング用の「フライ」の作製もする。銅線で作った骨組みに、鳥の羽根や化学繊維を巻きつける。

部活データ:

1995 年創部。部員20 人(2年生7人、1年生13 人)。活動はシーズンによって異なるが、ほぼ毎日。定期的に部内で釣り大会を開催している。