中高生から支持を集める「キャンパスノート」シリーズ。12月には、スマホでも撮りやすいように、開いてもページが膨らまない、画期的な新商品が発売されます。コクヨによると、製品化には約5年をかけ、社員同士でぶつかり合いながらも妥協をしなかったといいます。商品企画担当の絵馬多美子さんに、企画開発の舞台裏を聞きました。(文・野村麻里子、写真・コクヨ提供)

開くと平らなノートを作りたい

―12月、絵馬さんが担当した新商品「キャンパス フラットが気持ちいいノート」(フラットキャンパス)が発売されますね。

名前の通り、開いてもページが膨らまず平らな状態で使えるノートです。中高生にノートの使い方を聞くと、スマホで撮影して見たり共有したりすることがとても多かったんです。ノートが膨らむと、文字がゆがんで撮影しにくい。フラットキャンパスは、開いても平らを維持できるのできれいな写真が撮れ、ストレスなく使えます。

旧ノート(画像上)とフラットキャンパス(画像下)。比較してみると平ら具合がはっきりわかる

さらに、ページ上にある、あまり使われていなかった「ページ番号欄」を思い切ってなくし、代わりに、タイマーを使って学ぶ人のニーズを反映して「時間を記入する欄」を設けました。

時計のマークと共に、時間を記入する「Time」欄を設けた

―開発期間は?

約5年になります。3年前に「フラット製本」の技術は開発できていたのですが、それを採用したノートの量産の実現が難しかったんです。生産工程に手作業が入っているため、たくさん作れず一商品の値段も高くなってしまい……。今回、ようやく量産体制が整い、実現できました!

「フラットが気持ちいいノート」の企画開発を担当した絵馬さん

―フラット製本とはどんな技術ですか?

そもそもノートには、糸で製本する「糸とじ製本」と、のりだけで製本する「無線とじ製本」の二つのとじ方が主流で、フラット製本は無線とじです。

無線とじは、ノートの表紙と中の紙をのりだけで固定するので、のりを浅くつけるとばらけやすくなります。反対にしっかりつけると丈夫にはなりますが、フラットに開きにくいのが難点。フラット製本は、強度を維持しつつ、フラットに開けるバランスを追求した製本技術です。

コクヨが開発した無線とじ製本

絶対に譲れない思いがある

―フラットキャンパス商品化までを振り返ってみて、大変だったことは?

企画担当としては「とにかくフラットであること」が譲れない。でも、現場担当は、大量生産するために作りやすさや耐久性が譲れない。その間で開発担当が板挟みになる……という状況になりましたね。私が「もっと平らにできないですか?」と声を上げると、「でも耐久性を維持するにはもう少ししっかりのりを付けないと厳しいです」と現場から返ってくる。そんなせめぎあいを乗り越えてきました。

―それぞれの担当として譲れない部分があるんですね。

例えば、ノートの一ページ目を見てください。

通常は強度を保つため表紙にのり付けをしている

一般のノートは強度を保つため、表紙に5ミリほどのり付けしてあるんです。でも、そうすると、必然的に開くと膨らんでしまう。「フラットさ」が売りのノートなのに、一ページ目が膨らんだらがっかりするじゃないですか。

―確かに……。

だから、一ページ目ののり付けはなくしたかった。でも現場担当からすると、「なくすのは強度がちょっと不安」という意見になりますよね。「もしのり付けできなかったらどうしますか? もししなくても発売できますか?」って何度も聞かれました。企画としては、フラットさは絶対に譲れないので「もし、はナイです! のり付けはしないでください!」と言うしかない。会議でも議論になりましたが、現場や開発担当が力を尽くしてくれて、のり付けせず製品化できました。

フラットキャンパスは強度を保ちつつ表紙をのり付けしないかたちで製品化できた

―人を動かす力というか、コミュニケーション力が必要な仕事に感じます。

はい、必要です。毎回「伝え方が悪かったかなあ」「分かりづらかったかなあ」って反省の日々です。

―強く言うのは苦手なタイプですか?

いや、反対ですね……。「強く言い過ぎた」って、言ってから落ち込んでいます……。

―それだけ、商品づくりにかける熱い想いがあるということですね。

えま・たみこ 1983年生まれ。2001年、大阪府立千里高校卒業。06年、滋賀県立大学人間文化学部生活デザイン学科卒業、同年コクヨ入社。2児のママ。

キャンパスフラットが気持ちいいノートを10人にプレゼント!

高校生新聞編集部LINE公式アカウントとお友達になってから、「ノートプレゼント希望」と明記の上、「学校名・学年・性別・記事の感想」をメッセージに書いて送ってね。1月30日締め切り。応募資格は高校生・中学生に限ります。当選者には編集部からメッセージでお知らせします。