一般選抜では高倍率になる難関私立大も、その多くが総合型選抜(AO入試)を実施している。総合型選抜で合格を勝ち取るには、どのような点を意識して準備を進めればよいのだろうか。早稲田塾の中川敏和さんに聞いた。(安永美穂)
大学卒業後も見据える人が合格する
―難関私立大の総合型選抜は、特別な経験や才能がないと合格は難しいですか?
出願条件として、全国レベルの大会などでの実績が必要とされるものもありますが、そのような経験がなくても出願できるものも数多くあります。「この大学でこういう研究をしたい」という自分の熱意をアピールできる選抜方式のものを探してみるとよいでしょう。
―難関大の総合型選抜に合格する人の特徴は?
難関大に総合型選抜で合格する人の多くは、大学合格をゴールにするのではなく、社会に出てから何をしたいのか、その先を見据えて行動しています。自らの「志」を中心に据えて、研究したいテーマへの熱い想いを語ったり、課題解決のために行動したりすることができる人が合格を勝ち取っていると言えるでしょう。
準備は早ければ早いほどよい
―準備はいつごろから始めれば間に合いますか?
総合型選抜は、高校での探究学習の経験を活かせる入試方式です。探究学習は短期間の取り組みですぐに成果が得られるものではなく、ある程度の時間をかけて継続していくことで、理解がらせん状に深まっていくものです。そのため、準備を始めるのは早ければ早いほど良いと言えます。「思い立ったが吉日」と考えて準備を始めてほしいと思います。
志望理由は社会貢献まで意識して
―志望理由を書くときに心がけるとよいことは?
「自分はこういう研究をしたいから、この大学に入りたい」というレベルから、さらにもう一段階、深く掘り下げてみましょう。
例えば、「この分野の先行研究にはこのようなものがあるが、関連したこのような課題は十分に研究されていない。自分はその課題を解決する方法を探るために、この大学でこういう研究をしたいと思っている」といったことまで伝えられるとよいでしょう。学術論文をオンライン上で検索・閲覧できるウェブサイトを活用すれば、自分が研究したい分野ではどのような論文が発表されているのかを調べることができます。
また、自分が興味のあるテーマについて大学で研究することにより、社会のどのような課題を解決できるのか、社会にどう貢献できるのかといった点にも言及すると、より説得力のある志望動機になります。
小論文は反対意見への反論も考えて
―小論文試験に向けてやっておくべきことは?
小論文では、題意を正確に捉えて、聞かれていることについて論じることが重要です。問題は学部ごとに作成されているため、志望する学部に関連する社会課題についての見識を日頃から深めておきましょう。自分の意見に対してどのような反対意見があるのかを調べ、その反対意見に対する反論や提言ができるように準備しておくと、説得力のある論を展開できます。
■小論文の種類
・課題論述型…与えられた課題について分析し自分の意見を述べる。
・文章読解型…文章を読みながら筆者の意見を読み取り、それに対する自分の意見を論述。
・資料分析型…表やグラフが提示され、その問題点や解決策を論述する。
一般選抜の対策も並行しよう
―地方在住の高校生が都市圏の大学の総合型選抜を受験するメリットは?
大学によっては、日本全国から多様な価値観や問題意識を持つ学生が集まることを期待して、受験生の出身地域ごとに定員を設ける形式の総合型選抜を実施していることがあります。
そのような形式の総合型選抜では、自分が住んでいる地域の課題を解決するために行動した経験があることが強みになります。該当する人は積極的に挑戦してみるとよいでしょう。
―一般選抜の対策も並行して進めるべきですか?
先輩受験生の多くは一般選抜の対策にも並行して取り組んでおり、総合型選抜で不合格だった大学に一般選抜で合格するケースは珍しくありません。総合型選抜で合格した場合も、大学進学後の学びに支障がないように、基本的な学力はしっかり身につけておきましょう。
中川敏和さん なかがわ・としかず 早稲田塾 執行役員・本部長。1997年から東進、早稲田塾で一般選抜、総合型選抜、学校推薦型選抜など、さまざまな大学受験指導を25年間行う。受験生の娘をもつ父親でもある。