筑波大学附属高校(東京)の文化祭「桐陰祭」が、9月に開催された。これまで「電動コーヒーカップ」や「VRジェットコースター」など、来場者を驚かせるアトラクション系企画を制作してきた同校。3年ぶりの対面開催に登場した、「アトラクション系クラス企画」を紹介する。(文・写真 椎木里咲)

ディズニーアトラクションを再現

TOIN STORY(3年3組)

初めに紹介するのは、「TOIN STORY」(3年3組)。東京ディズニーシーの人気アトラクション「トイ・ストーリー・マニア!」をモチーフにしたクラス企画だ。左右に動くトロッコに乗ったプレーヤーが30秒の間に点数の書かれた的にボールを当て、何ポイント獲得できるかを楽しむ。

トロッコにはロープがついていて、生徒が左右から引っ張ることで動かす

「クラスは去年から持ち上がり。去年の文化祭でトロッコを作ったのですが、来年に生かすには何をしたらいのかなって考えていて。『TOIN STORY』は、去年終わった頃には考えついていたアイデアの一つです」(中田宜克(きよし)さん・クラス企画責任者)

クラス企画責任者の中田宜克さん

大変だったのは、しっかりと安全性を保つこと。「ヘルメットをかぶってもらったり、最後に坂道を下るコースでトロッコの足をしっかりハマるようにしたり。自分たちで乗ってみて、トライアンドエラーを繰り返しました」

的のデザインや色味は「トイ・ストーリー・マニア!」を忠実に再現し、教室では「トイ・ストーリー」シリーズの楽曲を流すという徹底ぶり。まるで東京ディズニーシーを訪れたかのような感覚になるアトラクションだ。

手動で動く本格的なメリーゴーラウンド

なかむランド(1年2組)

次に紹介するのは「なかむランド」(1年2組)。教室の空間を目いっぱい使って、メリーゴーラウンドとコーヒーカップを作り上げた。

メリーゴーラウンドとコーヒーカップ。すべて手動で動かしている

骨組みは鉄パイプで、メリーゴーラウンドの馬とコーヒーカップは木材で作られている。メリーゴーラウンドを上下に動かす係、全体をぐるぐると回す係に分かれて、手動で操作を行う。

設計者の河島唯人さん

設計を行ったのは河島唯人さん。夏休みが始まる前に3Dソフトを使って設計をはじめ、夏休みから実際に教室で組み立てて調整を始めた。

「馬が上下すると馬も連動して下を向いて動くようにしたんですけど、それが傾きすぎてしまうと危ないので、調節に苦労しました。パソコン上の設計だけでは分からないことも多く、パイプを組み立てる『本体班』と一緒に、組み立てながら調整を重ねました」

調整を重ねたメリーゴーラウンドとコーヒーカップは、教室の大きさにぴったり収まっていた。しっかりと組み込まれた鉄パイプが全体を支え、来場者たちはコーヒーカップの回転や馬の上下の動きを楽しんでいた。

時速20キロで教室を駆け巡る

おかしなジェットコースター(1年4組)

最後に紹介するのは、「おかしなジェットコースター」(1年4組)。教室を半周するコースをトロッコで走り抜けるジェットコースター。並べた机の上に木材を固定して坂道を作り、手作りのトロッコに1人ずつ乗り込んで駆け降りるアトラクションだ。

机と木材を重ねて傾斜を作り、ジェットコースターのコースを制作

設計を担当した西口直輝さんによると、そのスピードは時速約20㎞。トロッコが走ると「ゴオッ」という音が響き、スリリングな様子がうかがえる。傾斜やコース中のカーブなど、角度の計算には苦労したという。「木材の長さはあまり加工したくなかったので、市販で売っている長さで計算しました。習いたての三角比とかを使いました(笑)」

設計に携わった西口直輝さん

トロッコに乗り込む人は安全対策のためヘルメットを着けるが、そのヘルメットにもかわいらしい装飾が施されている。これは、このクラスのテーマ「ヘンゼルとグレーテル」をモチーフにしたものだ。

「僕たちのクラスは『魔女になりきってジェットコースターを楽しもう』ということになっています。ヘルメットに魔女の帽子をつけて、テーマに沿った安全対策を設定しています」

3年ぶりの対面開催 コロナ対策は

3年ぶりの完全オフライン開催となった同校文化祭。実行委員長の高橋叶多さん(3年)によると、約1年かけて準備を進めてきたという。校内の各所に消毒液を設置したり、来場者を保護者、受験予定の中学生とその保護者に制限したりとコロナ対策も万全に行った。

実行委員長の高橋叶多さん

「(現地開催にあたっては)先輩方から大量の資料を共有してもらい、それをもとに進めていきました。外来者を迎えるかどうかも感染状況によったので、できたということがうれしい」