大学入試共通テストと私立大学の一般選抜では、テストの形式や特徴、そして対策がまったく異なります。そこで今回は、それぞれのテストの特徴と具体的な対策から、共通テストの基本情報まで、誰もが気になる部分について、河合塾教育研究開発本部の近藤治さんに聞きました。
50万人が受験する日本最大のテスト
大学入学共通テストは、2020年度までは「大学入試センター試験」と呼ばれていたテストです。その前は「共通一次試験(大学共通第1次学力試験)」と呼ばれており、元々は国立大学に入学するための試験だったのですが、センター試験に変わったタイミングで私立大学も利用するようになりました。
その後、30年ほどセンター試験として実施され、2020年度から、現在の大学入学共通テスト(以下、共通テスト)に変更になりました。これは大学進学を目指すすべての受験生のための「共通」のテスト、という位置づけになっています。
テストの特徴としては、「共通」という名前の通り、日本全国で一斉に同じ日、同じ時刻でテストがおこなわれます。ですので、50万人弱が受験する日本で最大の全国テストとなります。
体内時計を意識して問題を解こう
共通テストの最大の特徴は、時間が足りなくなるテストだという点。毎年平均点が公表され、問題の難易度が平均点に反映されますが、このテストの何が難しいかと言うと、問題数が非常に多く、解答する時間が十分にないという部分です。
難関私立大学の試験や、国公立大学の2次試験というのはじっくりと考えて解答するタイプの問題が多いですが、共通テストでは時間切れに陥りやすいです。そのため、難しくて解答に時間がかかりそうなときは、その問題をスキップしてしまうような「共通テストならではの解答テクニック」が要求されます。そういった意味で、難関私立大学の入試対策や国公立大学の2次試験対策とは違った対策が必要になるのです。
具体的な対策としては、時間を意識しながら練習問題を解いていき、身体の中に「共通テスト体内時計」を染み込ませていくこと。特にテスト直前のタイミングでは、この「体内時計」を意識して問題を解くようにしましょう。
また、問題文が非常に長い点も時間が足りなくなる要因です。そのため、どの教科でも問題の読解力や速読力が求められるようになっています。
私大一般選抜の違いは記述問題の有無
共通テストとは違い、私立大学の一般選抜は大学ごとでまったくその特徴が異なります。そのため、すべての基本となる、教科書に書かれている重要事項をしっかりと押さえていくことが大切です。
また、マークシートを用いた多肢選択式の共通テストに対し、私立大学の一般選抜はマークシートもありますが、基本は記述問題が多く出題されます。最近はスマートフォンの普及もあり、字を書くということが少なくなりました。そのため、頭の中で良い解答が浮かんだとしても、「採点する人に文章として伝えられない」という課題が出てきています。難関の大学になると50〜100字くらいの記述問題や、英語の和訳問題が出題されます。そのため、書く練習というのは非常に大切です。
一般選抜の難しい点としては、毎年必ず出題されるような頻出分野がある大学もあれば、毎年傾向が大きく変わる大学もあるという点です。12月以降の段階では、受験する大学をある程度絞り込んでいるはずですので、自分が得意な科目であれば過去問をひたすら解くことに時間を費やし、自分が苦手な科目や未習の部分が残っている科目であれば、その日学校で勉強したことをその日のうちに消化していくような対策が必要となります。
急なトラブルも、慌てず冷静に
2023年度の共通テストは2023年1月14日(土)、15日(日)に実施されます。昨年度同様、今回も試験においては新型コロナ対策がおこなわれていますが、まずは新型コロナやインフルエンザにかからないように、しっかりと予防することが大前提です。しかし、万が一感染してしまった場合に、どのような行動を取れば良いか確認しておくことも重要です。
テストの時間割については、昨年度や一昨年度と変更はありません。2025年度から新課程での入試が導入される予定ですので、逆にそこまでは大きな変更はないと思われます。
試験は寒い季節におこなわれますので、体調管理はもちろんのこと、雪などによる交通機関の乱れ等にも注意が必要です。予期せぬ出来事が起こるとパニックになってしまいがちですが、そういったトラブルに関しては何らかの措置を施してもらえますので、慌てず冷静さを保つことが大切です。
- 近藤治さん
- 学校法人河合塾教育研究開発本部主席研究員。河合塾入塾後、教育情報分析部門で大学入試動向分析や進学情報誌の編集に携わる。教育情報部部長、中部本部長などを経て、2021年4月から現職。マスメディアへの情報発信、生徒、保護者、高校教員対象の講演を多数実施。
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