データネット実行委員会(ベネッセコーポレーション・駿台予備学校共催)による2021年度大学入学共通テストの「政治・経済」の問題分析は次の通り。
幅広い知識と思考力を活かして、資料を読み解く問題が多く出題された
「倫理、政治・経済」との共通の設問が4大問中3大問で出題された。基礎的事項の深い理解が求められ、具体的な事象にあてはめる問題や資料を読み取る問題がみられた。昨年センター試験よりやや難化。
大問数・解答数
昨年のセンター試験と比べて、大問数4で変更なし。解答数は31個と昨年のセンター試験と比べて解答数は3個減少した。第2問・第3問・第4問の一部は「倫理、政治・経済」との共通問題。
出題形式
昨年のセンター試験と比べて、問題ページ数は5ページ増加し、解答数は3個減少した。全大問が授業での発表や探究など、生徒の学習活動を場面にした問題設定であった。昨年のセンター試験と比べて、文章選択問題が5問減少し、組合せ問題が4問増加した。
出題分野
経済分野・国際経済分野が1大問、政治分野が1大問、経済分野・国際政治分野が1大問、国際政治分野・国際経済分野が1大問出題された。
問題量
昨年のセンター試験並。
難易
昨年センター試験よりやや難化。
大問別分析
第1問「望ましい社会の姿」 (24点・解答数7)
経済分野・国際経済分野からの出題。経済成長、所得分配、持続可能性の側面から現代の諸課題をテーマに出題された。問2はある国の経済状況を示す表から、名目GDPや実質GDP、経済成長率など与えられた数字を読み解く問題。表が示す内容を理解するのに時間を要した受験生も多かったであろう。問5は国民の間での社会保障の財源の負担方法について幅広い知識を問う問題。社会保障についての基本的な理解が求められた。
第2問「法と人権、政治体制」 (26点・解答数8)
政治分野からの出題。判例を用いた問題が目立った。問3は最高裁の判例や学説を示した3つの資料を読み取り、義務教育の無償化について考えさせる問題であった。問4は日本の裁判員制度とその課題についての問題。裁判員の守秘義務の期間が問われており、戸惑う受験生もいたかもしれない。問5はふるさと納税制度などの時事的理解が求められた。
第3問「日本の労働、財政・金融や国際経済の現状」 (26点・解答数8)
経済分野・国際政治分野からの出題。考察する力を問う問題が目立った。問3はある国の国家財政における歳出と歳入の項目別の金額を示した表を読み取り、計算をしながら解答を導く問題。資料の丁寧な読み取りが必要であった。問4は金融についての知識と資料の読解・考察を求める難易度の高い問題であった。問6は国際収支の基礎的な内容をA国とB国という具体的な事例にあてはめて考える問題。国際収支の各項目の内容を理解し、表から必要な数字を読み取る力が求められた。
第4問「日本による発展途上国への開発協力のあり方」 (24点・解答数8)
国際政治分野・国際経済分野からの出題。国際協力を切り口に、探究活動の発表のための資料がリード文で用いられた。問6は国際貢献の1つとしてのマイクロファイナンスの意味と具体例を問う基本的な問題。発表のスライドを完成するように語句を選択する問題は目新しいが、問われている力は昨年のセンター試験と同様に基本的な知識であった。問7では、日本が援助を行う理由を説明したノートにある、2つの空欄にあてはまる文章を選ぶ問題。日本の国際貢献の意義を論理的に考えさせようとする工夫がみられた。
過去5年の平均点(大学入試センター公表値)
- 2020年度 53.75点
- 2019年度 56.24点
- 2018年度 56.39点
- 2017年度 63.01点
- 2016年度 59.97点