強さのヒミツ71 白梅学園(東京)ハンドボール部
白梅学園(東京)ハンドボール部は、全国選抜、インターハイ、国体と、2019年の全国大会すべてで決勝に進出した。特別なメニューやチームならではの珍しい練習があるわけではない。まずは守備面を安定させるという伝統的なスタイルを貫いている。 (文・写真 小野哲史)
常に守備を意識
メインの練習では、メリハリをつけるために攻撃と守備を20分間ずつ交互に行う。特に「守備への意識」は全員が高く持つ。攻撃の要である伊藤結衣(2年)も「ディフェンスは組織化され、一人ひとりの役割分担が徹底されているので、常に頭に置いています」と、
最前線で率先して体を張っている。
スピードが持ち味の布施蓮(2年)は、鋭いカウンター攻撃で存在感を発揮する。それでも「素早く動き、手を大きく広げて相手の邪魔をする」と守備面での貢献度も大きい。2人1組で体をぶつけ合うメニューや週2回行う筋力トレーニングで、「体づくりを大事にし、力負けしないプレーが増えた」という実感もある。伊藤の「実力差がない相手との試合や接戦で、ギリギリで守れて防げたり、なだれ込んでシュートを決めたりできるようになった」ことも体幹強化の成果だろう。重要な試合ほど1点の持つ意味は大きくなる。
相手を想定してゲーム
守備で最後の砦となるのが、主将も務めるゴールキーパーの木村百花(2年)だ。頻繁に行うディフェンスフットワークの練習は、「足の使い方が試合で生かされる場面が多い」と話し、取材日も1本1本を集中して取り組んでいた。「相手を想定したゲーム形式のシミュレーション練習もチーム力を高めた」と感じている。
今年は全国制覇にあと一歩届かなかった。なかでも決勝戦で終了20秒前までリードしながら追い付かれ、延長の末に惜敗した10月の国体は、木村も伊藤も「悔しくて一番印象に残った試合」に挙げる。球技では一般的に攻める方が楽しい。しかし、そういう選手ばかりではチームとして成り立たない。白梅学園は全員がチームのために、身を粉にして動くことをいとわない。
木村百花(ももか)(2年/主将・ゴールキーパー)「チームが不調な時こそ声を」
ゴールキーパーとしてゴールを守るのはもちろんです。一番後ろにいるポジションなので、みんなは背中から声が聞こえたら安心するだろうと思って、「ナイス!」など積極的に声を出すようにもしています。また、キャプテンとしても、チームが不調なときこそ声をかけて、みんなを盛り上げるようにしています。
毎日の練習では、明るく元気よく、一人ひとりが一つ一つのメニューにしっかり意識を持って取り組んでいます。今年は選抜、インターハイ、国体と全国ではすべて準優勝で悔しい思いをしました。 スタートしたばかりの新チームでも全国の舞台で上位で戦えるように、まずは新人戦で東京都と関東大会を1位で通過して、今度こそ日本一になりたいです。
伊藤結衣(2年/ポストプレイヤー)「体の強さが必要」
ポストプレイヤーは最前線にいて、相手守備に一番近いポジションです。味方がシュートしやすいように、相手選手を引きつけてスペースを作って、自らもシュートを狙っていきます。その点では体の強さが求められます。
ゴール前で反則された時の7mスロー(サッカーでいうPK)も任されているので、フリーの時間にはたくさん練習しています。7mスローはインターハイでは確率良く決められたものの、国体ではすべて外してしまいました。国体はディフェンスはいつもより頑張れましたが、全体的に自分のシュートミスが多く、決勝では終盤に追いつかれて延長で負けました。それが本当に悔しかったので、これからもっと練習して頑張りたいと思います。
3年生の先輩たちとは中学の時からの関係ですが、体つきがその頃とは変わって強くなり、精神面でも大人です。自分も先輩たちのようになって、みんなを引っ張っていかないといけないと感じています。
布施蓮(2年/右バック)「YouTubeで外国人選手を研究」
自分は他の人より体が小さいので、それを感じさせないように、小さい選手だからこそできるプレーや素早いフェイントなどを意識しています。それでも高校では体の当たりが相手も強くなるので、メディシンボールやシャフトを使った体作りを大事にやってきたことで、だいぶ当たり負けしないプレーができるようになりました。
家にいる時は、YouTubeなどの動画サイトで大学生や社会人、海外の選手のプレーを見ることも多いです。外国人選手に関しては日本人との違いもあるため、すべてを真似することはできません。でも、パス回しやフェイントなど参考にできることもあるので、練習で試したりもしています。
今年は先輩と全国大会でプレーさせてもらえて、3月の選抜からインターハイ、国体と大会を重ねるごとに成長できたと思います。新チームの初遠征で優勝し、良いスタートが切れたので、またみんなで一つずつ頑張っていきたいです。
須川文敬監督「見ている人が楽しいハンドを」
高校スポーツは子どもたちが入れ替わりますから、毎年、日本一を目指せるわけではありません。彼女たちが持っている能力を目いっぱい出させて組み合わせ、チームとしてどれぐらいになるのか。それは年によって変わります。全国には強豪校が多いですから、条件が揃わないと、全国制覇を狙うレベルまではそう簡単には行けないのです。とにかく今ある条件の中で、最大限のパフォーマンスができるように全力を尽くす。それが楽しみでもあります。
白梅学園は校風的にも穏やかな子が多く、「闘志をむき出しに戦う」というスピリットがなかなか身につきません。私自身もそういう面の指導は苦手なので、まずは技術を上げてフィジカルを鍛えることからやらせています。強いて言うなら、攻撃も守備も見ている人が楽しいハンドボールを目指しています。
平日の練習の流れ
- 16:00
- ウオーミングアップと体づくり
※ディフェンスフットワークや体当たりの他、動きながら のパス練習など、基本的なメニューを含む
- 17:00~
- オフェンス練習とディフェンス練習を20分間ずつ、 交互に行う
※オフェンスは加速パスやシュート練習など
※ディフェンスは相手役の攻撃を連携して止めるなど
- 18:30ごろ~
- 6対6(ゲーム形式)
- 19:00ごろ
- クールダウン後、練習終了
TEAM DATA
1991年創部。部員27人(3年生9人、2年生6人、1年生12人)。全国選抜大会2015年優勝、インターハイ05年3位、国体05年優勝。19年は3大会すべてで準優勝。練習日は火・水・金曜の放課後と土日、体育館かグラウンドで行っている。