では、実際に三年劇はどのように形作られるのでしょうか。脚本家を担当した先輩である野口智未さんに話を聞きました。

「スロウハイツの神様」を上演した3年生のクラス。外装も美しい

約1年かけて準備

――どのように演劇を作りましたか?

2年次の文化祭が終わった1カ月後の10月頃から始動しました。2年生の11月までには、クラスを統括する「展示チーフ」や舞台を仕切る「監督」「演出」などが決まります。「劇選チーフ」(台本を決めるグループ)が上演する台本を春休み前までに2~3個に絞って、クラスで検討し、決定します。台本が決まったのは4~5月頃。その後に役者を決めて稽古を始めました。

台本の完成は本番前日

――どんな内容の演劇を行ったのですか?

辻村深月さん原作「スロウハイツの神様」をもとに、自分たちだけで台本を書き起こしました。

――どのように台本を作ったのですか?

まずは、原作のせりふを全てパソコンで打ち込みます。上演時間80分に納めなくてはならないので、話の本質を外さないように削り、長いせりふはオリジナルの表現に変えて加える、という作業を脚本班全員で行いました。この「削る&加える」作業を11回以上繰り返し、最終稿が完成したのは文化祭前日でした。最終稿には、原作そのままのせりふはほとんど残っていませんでした。

――台本を作る上で大切にしたことはありますか

物語の本質を外さないように気をつけていました。原作を読んでみると分かるのですが、「スロウハイツの神様」はとても「あったかい」と思うんです。主人公コーキと環は、互いが互いの絶望を救った二人として描かれていいます。ただ、当の二人は相手が自分を救ってくれた人とは知らず、お互いに相手を「神様」だと思っています。彼らの「愛を超えた愛」「ほっこり」した感じを、終演後に抱いてもらえるよう意識しました。

劇の表現方法を追求

――文化祭を経て得られたものは何でしょうか

3カ月間、1つの劇の表現方法を迷い続けてきました。最後にようやく突き詰めたけれども、同時に自分の経験不足を感じました。この劇は、まだまだ伸びしろがあると思います。「自分が見ている世界をどう伝えていくか」「どういう所に人が響くのか」など、考えが深まりました。