正智深谷高校(埼玉)の文化祭「葵祭」(9月)で、2年12組の35人が「ウォータースライダー」を手作りした。全長16メートルもの大型アトラクションをどのように作りあげたのかを聞いた。(文・写真 中田宗孝)
ゴムボートでため池へザッバーン
約2カ月かけて校内の中庭に「ウォータースライダー」を作りあげた。ゴムボートに乗って約16メートルの直線コースを降下していく。ゴール地点の人工ため池の水を農業用ポンプで循環させ、水がスライダー部分にも常時流れるようにしている。
約2メートルの高さから滑り出すと、人を乗せたゴムボートはため池へと勢いよく「ザッバーン!」。水しぶきを浴びた体験者たちは笑顔で悲鳴あげていた。同クラス副委員長の深澤向陽君は、「『凄いな。めっちゃ早いな!』と感じました。スリルも味わえる」と、初滑り時の興奮を振り返った。
迫力感じる設計をしたい 角度にもこだわり
クラス企画を決める際、担任の黒木千香先生が生徒たちに伝えた言葉がある。「高校の時の文化祭は楽しかったな。卒業後にそう振り返れるような、思い出に残るモノをやろう」
企画代表を務めた髙山椋太郎君は、その言葉を胸に、準備を進めてきた。だが、「(ウォータースライダーは)僕らの学校では初めての企画。ワクワクした反面、本当に作れるのかと不安も大きかったです」と振り返る。
製作にあたり、ものつくり大学の教授に必要な資材などのアドバイスをもらい、教授から農業用ポンプも借りることができた。髙山君は、他校が製作したウォータースライダーを参考に、設計に取り掛かった。こだわりはスケール感だ。「(設置場所の)中庭の端から端まで目一杯使おうと思いました。見た目にも迫力を感じてもらえるように」
校内のちょっとした坂で速度実験を繰り返し、スライダーの角度をどの程度にするか検討。「僕らのウォータースライダーの角度は10度にしました」(髙山君)
熱意に突き動かされクラス一丸に
連日、製作に没頭する髙山君の姿に、深澤君は突き動かされた。「今まで見たことない顔でした。(髙山君は)放課後になると、『みんな集まろう』『30分だけでもいいので手伝って』と、クラスメートに呼び掛けているんです。協力してあげたいと思いました」
多くの鉄パイプを使用して本体を組み立てるため、作業にあたる生徒はヘルメットを必ず着用。文化祭本番でも、体験者が滑る前に「ボートから乗り出さないでください」と注意事項を丁寧に伝えるなど、安全面は徹底した。「僕らは運営側であることを意識しました。自分たちのちょっとした気の緩みが事故に繋がるので」(髙山君)
文化祭当日の朝に完成した。フルーツポンチの販売をメインで行うクラスの女子生徒たちも、製作に積極的に協力してくれたという。「みんなの本気の頑張りに、ちょっと涙が出そうになりました」(髙山君)