渡部春雅(かすが)(東京・駒澤大学高2年)は、インターハイ(全国高校総体)自転車競技2種目で優勝するなど、多くの大会で好成績を収めている。「2024年のパリ五輪の自転車競技への出場も将来の目標」と語る、渡部の日々を聞いた。 (中田宗孝)

本番は「楽しんだもの勝ち」

今年8月には半月にも満たない期間の中、インターハイなど4つのレースに出場し、すべてで優勝という無類の強さをみせた。レース経験豊富な渡部だが「スタート直前は、口から心臓が飛び出そうなくらい毎回緊張しっ放し」。いざレースが始まれば「楽しんだもの勝ち」と心のギアが変わる。「どの選手よりもレースを楽しもうという気持ちは強いと思う」

朝ロードバイクで60キロ

試合を楽しむ心持ちは、日々のタフな練習量に裏打ちされる。週2~3回の朝練では、30~60キロを走破。学校付近を自転車競技経験のある大人の練習パートナーと共にロードバイクで体力の限界まで走り、自らを追い込む。自転車競技部は渡部1人で、学校に専用の練習環境がない。授業後は兼部する陸上競技部でランニングに精を出す。「部活では自転車に乗りませんが、走ることはすべてのスポーツの基本。部活で脚力を鍛えています」

渡部春雅は今年、日本オリンピック委員会から「2019年度オリンピック有望選手認定」を受けた(酒井健作撮影)

休日には、200キロのロングライドを敢行することも。「(取材日直近の休日練習では)朝5時から17時まで自転車競技の練習を行いました。たくさん自転車に乗れて幸せ」と、無邪気にほほ笑む。「試合までにどれだけの準備ができるかが勝負だと思っています。そして、出場選手の中で一番強い走りを見せた人が勝つんです」

かぼちゃ好き「クラスみんな知ってます」

校内での取材中、授業を終えて部活に向かう男子、女子生徒たちが渡部に声を掛ける場面を何度か目にした。他競技の生徒たちも自転車競技に励む彼女を応援してくれるという。「かぼちゃ好き」ということがクラス中に知られていて、「昼食の時にクラスメートがかぼちゃの煮物をくれます(笑)」とはにかむ。「試合を終えて学校に戻ってくると『おかえり』と、みんなが言ってくれるのがうれしいんです。学校生活も楽しい」

感謝の気持ちを胸に「パリ五輪出場」見据え

年齢を重ね、来年ユースからジュニアへとクラスが上がる。目下の目標は、「ジュニア世界選手権自転車競技大会」への出場だ。渡部は「(来年の)インターハイで2連覇や2冠(を目指す)……といった個人成績はまったく気にしていません。それよりも大切なことがある」と話す。「親、練習パートナー、学校の先生や友達……自分をいつも支えてくれる方々への感謝の気持ちです。みなさんに恩返しできるとしたら、世界選手権やオリンピックなどの大きな大会で結果を残すことです!2024年のパリ五輪の自転車競技への出場も将来の目標です」

平日のスケジュール

5:30~7:30

週2~3回、ロードバイクで約30~60km(走行距離は平均値)を走破する。夏季は4時30分から練習開始。

15:30頃~17:30頃

所属する学校の陸上競技部で練習。長距離ランニングを中心に走り続ける。

19:00~

2週間に一度のペースで水泳をすることもあるが、帰宅後は基本的にトレーニングをせず身体を休める。

20:30~23:00

勉強などを終えたら就寝。

Q&A 手芸が趣味 

――好きな教科は?

地理が好きです。試合で全国各地を巡ることが多く、行き先で実際に見た名所などを地理の資料集で見つけるとうれしくなるんです。

――休日(オフの日)の過ごし方は?

完全オフの日はありません。部活が休みで自転車に乗らなくても、近所を軽くジョギングします。その方が、身体がほぐれていいんです。

――スポーツ以外の趣味は?

手芸です。自作の動物マスコットをコツコツと作っています。次はクマを作る予定です。

渡部さんが趣味で作った手芸作品(本人提供)

――自転車や陸上以外に好きなスポーツはある?

水泳、スキー、乗馬、マラソン、トライアスロンなどの経験があります。どの競技も楽しくて一つに絞れないんです。今はお休みしてるトライアスロンもいずれ再開したいと思っています。

わたべ・かすが 

 

2003年3月17日、神奈川県生まれ。はるひ野中卒。小6の時に自転車競技を始める。ロードレースを主軸とし、トラックレース、マウンテンバイク(MTB)、シクロクロスと、4つの自転車競技に取り組んでいる。今年のインターハイ「女子ポイントレース(12km)」「女子個人ロードレース(51.5km)」の2種目に出場し、それぞれ全国優勝。「女子個人ロードレース」は大会2連覇を達成。158センチ54キロ