「文章力に自信がない」「どう論じればいいのか分からない」と大学入試の小論文の書き方に苦手意識を持つ高校生は多い。小論文対策に励む際の大事なポイントや上達へのアドバイスを、駿台予備学校で論文科講師を務める松井賢太郎先生に聞いた。(構成・中田宗孝)

Q.小論文を得意にする方法は?

A.問われていることは何か、正確に把握できるようになろう

 

すごい内容を書く必要はない

 

小論文は、自分の意見・主張を書く。「修学旅行が楽しかった」のような、自分の思いを感情のままに書く作文と大きく違う部分だ。

小論文では、自分の意見や主張を論理的に述べなければならない。問題の意味を理解した上で、筋の通った意見(主張)が書かれていれば、それが合格水準だ。文章を書く際の基本的な作法は必要だが、巧みな文章表現は合否に関係ない。

合否の分かれ目は、あくまで小論文の内容。100人に1人しか思いつかないような、すごい小論文を書く必要もない。

何が問われているか捉える

もっとも大事なのは、「問題は何を聞いているのか」を分かるようになることだ。それを理解できれば小論文は半分成功したようなもの。だが、受験生の小論文を読むと、問題で聞かれていることを理解せず、きちんと答えていない文章を書く人が多い印象を受ける。

小論文を書くことは、いわば、みなさんの書いた小論文を通じて大学教授とコミュニケーションする行為。教授たちが「私たちはこんな研究をしてます。さて、みなさんはこの問題についてどう考えますか。どんな意見を持っていますか?」と、問われるのが小論文だと思ってほしい。高校生は、教授たちの研究内容を深く考察する経験が乏しい。教授と高校生との研究に対する問題意識に大きなギャップがあるため、小論文で聞かれていることに答えていない文章になってしまう。

過去問で練習を繰り返そう

聞かれている意味が分かるようになるには、志望する学部の基本的な考え方(原理・原則)を理解する必要がある。法学(部)的思考、経済学(部)的思考とはどんなものなのかなどだ。各学部の考え方をよく知るには、やはり各大学入試の小論文の過去問題だろう。過去問で小論文を書く練習を繰り返し、先生などの第三者に必ず添削してもらう。この積み重ねが小論文を上達させる方法だ。

小論文の問題、問題に付く課題文やデータ、そして、各学部の原則・原則となる考え方、この3つが星座のようにつながって見えてくると、小論文で聞かれていることの意味が分かってくる。

 

まつい・けんたろう

小論文の過去問題を実際に書いてみる実践重視の授業を実施。何度も書きながら自分なりの小論文の書き方を見つけられるよう導く