勉強法についての悩みに、多くの受験生を合格へと導いてきた各教科の先生がアドバイス。駿台予備学校の日本史科講師の田部圭史郎先生に答えてもらった。(構成・安永美穂)

Q.授業進度が遅いのですが、近現代史のポイントを理解するにはどうすればよいですか?

A.大きな枠組みを理解したうえで、個々の出来事を押さえていこう。

授業進度の都合により独学で勉強を進めなければならない場合は、まずは教科書の目次を参考に時代の大きな枠組みを確認しよう。そのうえで、明治期の政治についてなら「大日本帝国憲法の制定」をひとつの到達点として追いかけるといいだろう。すなわち、「1870年代の明治維新・自由民権運動」→「1880年代の憲法体制の確立・民権運動の展開」→「1890年の議会開設」という大きな枠組みを押さえる。

経済については、「資本主義の確立」を一つの到達点と捉え、そこに向かうプロセスを追求する意識を持つことが大切。すなわち、「1870年代の殖産興業政策」→「1880年代の松方財政・企業勃興」→「1890年代の繊維産業を中心とした産業革命」→「1900年頃の資本主義の確立」といった枠組みを押さえること。それから、殖産興業の中心となった「工部省」・「内務省」、企業勃興のきっかけとなった「渋沢栄一」の「大阪紡績会社」といった、個別具体的な歴史用語を覚えるようにすること。一つひとつ出来事をバラバラに覚えていくのではなく、それぞれの枠組みの中で個別具体的な歴史用語の位置付けをできるようにしておくことが重要だ。

なお、授業進度が遅い場合は、まず教科書をよく読み込み、分からない箇所があったら自分で調べたり先生に質問したりして、まずは内容を理解することを第一に考えてほしい。教科書にわからない箇所があるのは当然。わからなければ繰り返し読むこと。また、教科書はそれぞれの時代の政治・経済・文化を説明してから、次の時代の政治・経済・文化を見ていく、いわば「横」に見る構成となっているが、政治史だけ・経済史だけという縦の流れに着目する「縦読み」もすると、テーマごとの理解を深めることができる。日本史が苦手な人は、近現代史のポイントがまとめられている「日本史A」の教科書から読み始めるのもよいだろう。

 
田部圭史郎先生(駿台予備学校 日本史科講師)
たなべ・けいしろう 神奈川県出身。専攻は経済思想史。「理解を深める板書」と「記憶に残る話」を心掛け、日々熱い授業を展開中。模試や教材などの作成にも携わっている。趣味はドライブと旅行。