教科書を読んで予習を

化学は、さまざまな現象において何が起こっているのかを、目には見えないミクロのレベルで考察していく学問だ。物質が組み合わさることで生じる反応について理解するには、その前提として、一つ一つの物質の性質を知っておく必要がある。

例えば、塩酸と水酸化ナトリウム水溶液を混ぜると、塩化ナトリウム水溶液になる。この反応を理解するには、塩酸中の塩化水素は水素イオン(H⁺)と塩化物イオン(Cl⁻)に電離し、水酸化ナトリウムは水に溶けるとナトリウムイオン(Na⁺)と水酸化物イオン(OH⁻)に電離する。そして混合したとき、H⁺とOH⁻が結びついて水(H₂O)が生じるというように、各物質の性質を知っておかなければならない。

予習の段階で教科書を読み、「何が起きているのか」という現象だけでなく、その現象を引き起こしている物質の性質も考えてみよう。教科書と授業で基本的なポイントが理解できたら、資料集の図や写真も見てみると、それぞれの物質についての理解をさらに深めることができる。

実験は目的を明確に

実験に関しては「何を調べるための実験なのか」という目的を意識する習慣をつけよう。「この公式を用いて考えるために、この部分の数値を求めよう」といった実験の目的を明らかにすることで、どのような手順で実験を進めればよいか、得られたデータのどの部分に着目すればよいのかが見えてくる。実験をするときは図を描きながら、一つ一つの操作の意味を考え、分からないことがあれば先生に質問して解決しておこう。

細部までじっくり考える

化学の学習では、化学反応式だけを覚えようとするよりも、一つ一つの現象について細部までじっくり考えていく方が、知識がつながってスムーズに理解しやすくなる。「なぜ、このような装置を使ってこの手順で実験するのか」「なぜ、このような反応が起きるのか」といった疑問を大切にして、それぞれの物質の性質を踏まえた上で説明できるようにしていくと、「こういうことだったのか!」と現象の仕組みが分かることの面白さを味わえるはずだ。 (構成・安永美穂)

 

 

 

黒澤孝朋先生

(駿台予備学校 化学科講師)

くろさわ・たかとも 現役生から高卒生までの上位クラスを中心に指導。本質を大切にした分かりやすく丁寧な授業は、幅広い生徒から支持を得ている。