英国の教育専門誌「タイムズ・ハイヤー・エデュケーション」(THE)は3月28日、国内の大学の「教育力」を測って順位づけする「THE世界大学ランキング日本版2018」を公表した。昨年3位の京都大が東京大と並び1位に入った。(西健太郎)

国内353大学が参加、「教育力」を評価

世界大学ランキングで知られるTHEが日本版を発表するのは昨年に続き2度目。高校教員や企業の評判調査や、留学する学生の多さといった指標で「教育力」を測るもので、国内の全ての4年制大学に呼び掛け、353大学が参加した。

私立トップは慶應大、公立トップは国際教養大

東大と京大が同じスコアで1位。東大は昨年に続く1位だ。3位が東北大(昨年2位)、4位が東京工業大(昨年4位)、5位が九州大(昨年7位)と続いた。9位までは全て国立大だった。私立大の最上位は10位の慶應義塾大(昨年11位)で、11位の早稲田大(昨年10位)が続いた。公立大の最上位は、12位に入った秋田の国際教養大(昨年20位)だった。

高校、企業人事などにアンケート

調査は、学生1人あたりの教員比率や資金、教員1人あたりの論文数といった客観的な指標に加え、高校教員や企業の人事担当者のアンケート結果など、4分野13項目の指標を総合して集計した。世界版が研究力を測る指標が中心なのに対し、教育に関連した指標を比較的重視しているのが特徴だ。今年は新たに、在学中に留学する日本人学生の割合と、外国語で行われている授業の割合を加えるなどして、「国際性」分野のウエートを高めた。

京大は昨年秋に公表された「世界版」でも前年の91位から74位に順位を上げた。一方、東大は39位から46位に落ちていた。京大は、世界版と共通する研究面での指標の上昇に加え、国際性のスコアが東大を上回った。分析を担当したダンカン・ロスさんは「東大も京大も健闘しているが、(両大学とも)課題は国際性。京大は東大より国際性が改善された。留学する日本人学生の比率が高まったことがあるがそれだけではない。両大学の差はわずかだ」と話した。

世界大学ランキング日本版の分析結果について語るダンカン・ロスさん

分野別の首位は、「教育リソース」と「教育成果」が東京大、「教育充実度」と「国際性」が国際教養大だった。

国立大は資源活用しきれず、私立大は外部資金獲得に課題

調査に協力したベネッセコーポレーションの藤井雅徳さんは、調査結果から浮かぶ日本の大学の課題について「国立大は、学生あたりの資金や教員あたりの論文数などリソース(資源)の評価が高いが、それをうまく活用できていないのが課題だ。広報活動にも課題があり、よい取り組みをしていても他県の高校生に伝わっていない。一方、私立大は資金の調達などに課題がある。特に社会科学系の大学は外部資金が獲得できていない」と話した。

【調査の方法】「THE世界大学ランキング日本版2018」には353大学が参加。4つの分野の指標を総合して順位付けした。分野ごとの項目は次の通り。(カッコ内は総合スコアにおけるウエート)◆教育リソース分野(34%)=学生1人あたりの経常収入(8%)、学生1人あたりの教員比率(8%)、教員1人あたりの論文数(7%)、大学合格者の学力(6%)、教員1人あたりの競争的資金獲得数(5%)◆教育充実度分野(26%)=「グローバル人材育成の重視」についての高校教員の評判調査(13%)、「入学後の学力伸長」に関する高校教員の評判調査(13%)◆教育成果分野(20%)=企業人事の評判調査(10%)、世界の高等教育機関研究者の評判調査(10%)◆国際性分野(20%)=外国人学生比率(5%)、外国人教員比率(5%)、留学する日本人学生の比率(5%)、外国語で行われている講座(授業)の比率(5%)