「高校の化学は、用語や反応式など覚えることが多くて大変!」と思っている人は多いのでは? でも、テストで高得点を取るには、ただ暗記するだけではなく、原子などの構造をしっかり理解しておく必要がある。勉強のコツを、駿台予備学校の吉田隆弘先生に教えてもらった。 (構成・安永美穂)
今回のお悩み
原子をイメージしよう
化学の勉強で大切なのは、目に見えない世界を想像してみること。この世の中にあるものは全て、小さな粒(原子)が集まってできている。この粒は100種類くらいあるが、大学入試で主に問われるのはその半数以下にすぎない。だから、
それぞれの粒が「どんな個性を持っているのか」を理解して「どの粒とどんな結び付き
方をするのか」をイメージできるようにしておけば、化学反応式などを次から次へと暗記しなくても、自分で知識を整理しながら問題を解けるようになる。
粒の様子をイメージできるようにするには「元素の周期表を理解すること」と「図で考える習慣をつけること」が大切だ。
元素の周期表は、性質の似た元素が同じ縦の列に並んでいる。また、周期表の左側の元素は電子を出しやすく、右側の元素は電子を受け取りやすい。このように元素がどの位置にあるかにより、おおよその性質を推測することができる。それぞれの元素がどのような
ものなのかが分からなくなったときは、この周期表に立ち返り、系統立てて整理していくと知識が定着しやすくなる。
図で考える習慣を
図で考える習慣は、教科書を読むときにも、問題を解くときにも役に立つ。教科書を読むときは、用語や反応式だけに着目するのではなく、必ず解説の図を見て「どういう構造になっているのか」「何と何が結び付く(あるいは離れる)変化が起きているのか」を理解しておこう。
記号が出てきたら、ただそれを覚えるのではなく、その記号の意味を図で確認しておくことが大切だ。問題を解くときも、いきなり式を書いて答えを出そうとせずに、電子やイオンなどを図に描いてから考えるとイメージがつかみやすくなる。化学は、世の中にあるさまざまな物質の性質を、数少ないルールに基づいて説明することができる学問だ。
「この原子は陽イオンになるのか、陰イオンになるのか」「この物質は外から強い力が加わると割れるのか、それとも曲がるのか」といったことも、目に見えない粒の様子をイメージしながら図を描いていくと明確に説明することができる。
図で考える習慣を身につけることで、身近な物質の構造や変化について「こういうことなんだ!」と思う経験をぜひ積み重ねていってほしい。
まずは一通り解いてみる
勉強の方法としては、1つのことを完璧に理解してから次に進むのではなく、問題をどんどん解きながら、分からないことが出てきたら前の内容に戻って復習していくのがお勧めだ。
定期テスト前であれば、まずは薄くて簡単な穴埋め式の問題集などで、テスト範囲の問題を一通り解いてみよう。「最終的にこういう問題を解けるようにするために、こういう知識を身につけておく必要があるのか」ということを理解しておくと、基本として押さえるべきポイントが分かるので、学習がスムーズに進められるはずだ。
- 【よしだ・たかひろ】
- 神奈川県出身。大学院での専門は物性物理化学。博士(理学)。「100の問題演習よりも、1つの良問から得られる化学的思考力を大事にしたい」との思いを胸に講義を行う。入試突破はもちろん、入試問題を通して化学に興味を持ってもらいたいと願っている。