今年の大学入試センター試験本試験の「地理B」で出題された、「ムーミン」の舞台などを扱った北欧の文化や言語についての問題が話題になっている。センター試験の問題は新聞各紙に掲載されるなど毎年注目されるが、その出題体制はあまり知られていない。誰が問題を作成し、チェックしているのだろうか。(西健太郎)

 問題作成は大学教員400人以上が担当

大学入試センターが公表している資料などによると、試験問題の作成や点検のために三つの委員会があるという。

問題作成の中心となるのが「教科科目第一委員会」で、出題科目ごとに22の部会が設けられている。委員を務めるのは国公私立大学などの教員。2016年度は部会ごとに各9~25人が委員を務め、合計423人だった。

問題作成には約2年をかけ、本試験と追試験の2種類の問題を作成する。部会の開催日数は科目によって異なるが、45日程度だという。機密保持のため、問題作成は、大学入試センター内の問題作成棟のみで行われる。

2018年1月に実施されたセンター試験本試験の問題

高校教員経験者もチェック

こうして第一委員会が作成した問題を点検するのが「教科科目第二委員会」と「教科科目第三委員会」だ。第二委員会では、試験問題の構成や内容、解答などを点検する。科目ごとに部会がおかれ、16年度は各部会4~13人、合計145人が務めた。点検は年に3回程度(1回は5日間程度)行われる。委員は出題経験者が多いという。第三委員会は、出題経験者らが科目横断的に整合性や重複などを点検する。16年度は29人が務め、5回(合計20日)開かれた。

このほかに、高校での授業経験があり、現在は授業を担当していない管理職や教育委員会指導主事らが「点検協力者」として、高校教育現場を知る立場から問題の難易度などを点検している。16年度は全科目合計で57人が務めた。

大学入試センターでは過去の出題や、高校と中学の教科書をデータベース化している。関係者によると、一部の教科書だけに掲載されている知識がないと解けない出題を避ける配慮もしているという。

2018年1月に実施されたセンター試験本試験の問題

「とがった問題」の角がとれる

問題の作成や点検はこのように多くの大学教員がかかわり、二重三重のチェックを経て進む。問題作成の責任者である大塚雄作・大学入試センター副所長は高校生新聞の取材にこう語っている。

「問題作成担当の先生が『これは面白そうだ』という題材を持ってきてユニークな問題を考えても、センターには問題を点検する委員会が設置されていて、『これはやはり高校生には無理でしょう』などとチェックが入ります。何人もの目を通すうちに、『とがった問題』の角が取れていく。センター試験では、どうしてもそういうことが起こりますね」(高校生新聞2017年12月号掲載「センター試験出題の舞台裏」より)

2018年1月に実施されたセンター試験本試験の問題

問題作成担当、周囲に明かせず

問題作成者の氏名は、任期を終えて1年後に公表される。責任が重く、膨大な時間がとられる仕事だが、任期中は上司など限られた人をのぞけば、周囲に自身が委員であることを明かせない。問題作成者の確保は年々難しくなっているとも聞く。

例年、センター試験の実施後には、高校、予備校、大学の教員などから出題内容についての質問や指摘が寄せられており、第一委員会での検討を経て返答しているという。

2018年1月に実施されたセンター試験本試験の問題