取材日は主力数人が海外遠征で不在。世界ジュニアで筑後恵太(3年)と組んだダブルスで8強入りした山田尚輝(3年)が部を盛り上げていた

今夏の全国高校総体(インターハイ)バドミントンで、学校対抗と個人戦のシングルスとダブルス、男女合わせて5冠に輝いたふたば未来学園(福島)。練習では実戦を念頭に、一人一人が明確な課題を持ち、それぞれのメニューを高い意識で取り組むことで、全国や世界の舞台で活躍する選手を数多く輩出している。(文・写真 小野哲史)

「インドネシア流」を学ぶ

どんなに鋭いスマッシュを打ち込んでも、「甘い!」と全て軽く返されてしまう。バドミントンを国技とするインドネシア出身のコーチが、選手に高い技術とメンタリティーを注入していた。インターハイ女子ダブルス王者の由良なぎさ(3年)は「インドネシアのバドミントンはパワーがあり、タイミングをずらした打ち方やフェイントがうまい。練習の時から、普通では来ない球が来て(鍛えられるので)、試合で焦らなくなった」と語る。

新チームの主将を務める広沢紫雲(2年)は、コーチからよく「もっとガツガツやりなさい」と言われるという。毎年5月ごろに全部員で行くインドネシア遠征で「向こうの選手は体力もあって、いつもラリー負けしてしまう」ことが分かり、体力アップを図るためのトレーニングに、より真剣に取り組むようになった。選手は、強くなるための要素をバドミントン先進国から貪欲に学ぼうとしている。

漠然と返球しない

一つ一つのメニューに取り組む意識も高い。短い距離で相手と打ち合う基本ストロークは通常、ウオーミングアップとして行うチームが多い。だが、同校は実戦につながるプレーを心掛け、漠然と返球しない。強いシャトルはより強く打ち、しっかりコースを狙う。「基本が大事。できるだけミスをしないようにする」(広沢)

他にも「アファーメーション」と呼ばれる宣言がレベルアップに効果的だ。

「年に3回、各自が目標を決め、それに向かって強化します。紙に書いてベッドのそばやトイレなどに貼るので、いつでも目に入る」と由良。そうした取り組みが伝統的な強さを支えている。

ある日の練習の流れ

7:40~8:10       ランニング

9:00           フットワークトレーニング

9:20                   基本ストローク

9:40                   パターン練習(スマッシュ→ドライブ→ショートリターンなど)

10:20                 ノック練習

11:00                 実戦練習

11:50                 補強トレーニング

12:20                 学校へ移動、昼食

13:20                 授業

17:00~18:30     ウエートトレーニング

高い質にこだわる

 練習は全体で行うメニューもありますが、個別が多いです。課題や強化ポイントは一人一人違うからです。その際、着目点を間違えると意味のない練習になりますから、どこに意識を置いて取り組むかも重要です。各メニュー自体は、それほど特別な内容ではありません。しかし、一球にこだわるなど、できるだけ高い質にこだわっています。

 大堀均前監督の富岡時代から福島・富岡第一中学と連携し、6年間継続した指導ができるのも大きいと思います。それによって生徒は競技力が向上するだけでなく、あいさつや礼儀など人としても成長してくれます。何事にも真剣に取り組む姿勢は、毎回の練習時に掲げる部旗「富岡魂」の精神を象徴しているといえます。

 

本多裕樹監督

基本ストローク

 
 

単なるウオーミングアップにせず、実戦を意識して一本一本集中して打つ

ノック練習

 
 

前後左右に振られるノック練習で、フットワークや厳しい体勢にされてからのショットを磨く

インドネシア流の指導

 
 

インドネシア出身のコーチから指導を受ける部員。分かりやすい指導と好評

アファーメーション

 
 

目標を設定し、そのために何をするべきかを宣言する。年3回行い、普段からこの用紙を目につくところに貼っておく

 
 
【TEAM DATA】
前身の富岡時代の1995年に創部。部員26人(3年生9人、2年生8人、1年生9人)。インターハイは学校対抗で女子4度、男子3度の優勝があり、2017年には高橋明日香(3年)が個人戦の単複を合わせ3冠に輝いた。10月の世界ジュニアでは金子真大・久保田友之祐組(ともに3年)が日本勢初の金メダルを獲得。主な卒業生は桃田賢斗(NTT東日本)。部のスローガンは「MIND OVER BODY」。練習拠点は猪苗代町総合体育館「カメリーナ」。  (写真は学校提供)