同じ日本語のはずなのに、古文は何が書かれているのかが全然分からない……。そんな人のために、今月は駿台予備学校で古文を教える松井誠先生が効果的な勉強法を教えてくれた。「何となく」といった感覚で読むのをやめ、ポイントを押さえることで苦手を克服していこう!(構成・安永美穂)

今回のお悩み

 
古文が苦手です。
話の意味がつかめません…。
「付属語」を正しく読み取ろう
 
 

松井誠先生

 

まずは教科書音読

古文は日本語ではあるけれど、慣れるまでは外国語を学ぶつもりで取り組むことが大切だ。リズムをつかみ、文法を理解し、正確に訳すという3つの点を心掛け、基礎力を身につけよう。

まず習慣にすべきは、教科書を繰り返し音読して古文のリズムをつかむこと。授業の復習では現代語訳だけを確認するのではなく、意味を理解した上で必ず声に出して教科書の原文を読むようにしてほしい。

「つなぎの言葉」に注目

音読と並行して、文法のポイントを確認することも重要だ。古文を正確に読み取る上で注目すべきは、自立語と自立語をつないでいる「付属語」の部分。例えば、「ば」「とも」「ど」「ども」といった接続助詞に着目すると、順接か逆接か、あるいは「もし~としたら」という仮定の話なのかといった、文と文の意味のつながりが見えてくる。

付属語の中では、特に助動詞の意味・用法を一つずつ正しく理解することが重要だ。例えば、「き」と「けり」は、いずれも過去の助動詞だが、「き」は自分が直接経験したことを示し、「けり」は他人から伝え聞いたことを示すという違いがある。

推定の助動詞なら、「めり」は実際に目に見えていること、「なり」は見えていないことについての推定の意味を持つので、これらの助動詞に着目すれば「話題となっていることは、筆者の見えるところで起きているのか、それとも別の場所で起きているのか」という場面の構成を読み取ることができる。

このようにして付属語の意味を正しく押さえていくと、いくつか意味の分からない自立語があったとしても、「おそらくこういう意味だろう」と推測しながら読み進められるようになる。

また、書かれている事柄の前後関係も把握しやすくなるので「いつ何が起きたのか」という時間軸を整理できるというメリットもある。自立語の意味をたくさん覚えていても、助動詞や接続助詞といった「つなぎの言葉」の理解があやふやだと、文章の意味を正しく読み取れなくなってしまうので注意しよう。

訳は細部までこだわる

現代語訳をするときは、自分の訳が、先生の訳や問題集の解答にある訳と合っているかを必ずチェックしよう。古文では、付属語や敬語の意味を正確に捉えることが重要なので、訳は「ほぼ同じ」ではダメ。少しでも違うところがあったら、「自分の訳は先生の訳となぜ違うのか」「どういう点に気をつければ先生と同じ訳ができるのか」を意識して見直す必要がある。疑問点があれば、先生に必ず質問して解決しておこう。

古文は、書かれている内容を想像して読むものではなく、与えられた言葉をルールに沿って解読するもの。教科書を読む中で「こういう文の場合は、こういう意味になる」という「型」を一つずつマスターしていけば、次第に読める文章が増えていく。まずは自分の中の「型」を増やすことを目標に、助動詞などの細かな点を意識して、正確な現代語訳をすることを心掛けよう。

 
【まつい・まこと】
東京大学大学院人文社会研究科日本文化研究専攻博士課程単位取得退学。大学院では「源氏物語」を中心とする古代文学を研究。「何でもとことんやり抜く、やり抜けば必ず面白さが見えてくる」がモットー。