宮下こころ(左)と林田リコ

ソフトテニス女子で今年、全国高校総体(インターハイ)団体・個人の2冠を2年連続で達成し、その後の全日本選手権で高校生として67年ぶりの優勝という偉業を成し遂げた林田リコ・宮下こころ組(東京・文大杉並・ともに3年)。しかし、今年度のチームが始動した冬季のインドアシーズンは、自分たちのプレーができずに苦しんだ。

チーム事情から2人がペアを組まなかった3月の全国選抜(団体戦)は3回戦で敗退。「自分たちが上の代になって引っ張らないといけない立場になり、先輩がいた頃のように伸び伸びできなくなった」(宮下)ことや、「キャプテンになってチームをどうまとめるかばかり考えてしまい、余裕がなかった」(林田)ことが不振の原因だった。徐々に本来の調子と自信を取り戻す助けになったのが「テニスノート」だ。

悩みや相談事も書く

ノートを書くことは、部の決まりではない。ただ、林田も宮下も先輩を見習い、1年生のころからアドバイスやミーティングでの話、自身の反省や感想などを書き留めていた。1年ほど前からは、顧問の武元望美先生に毎日提出するようになり、悩みや相談事があれば一人で抱え込まずノートに書くようにしている。

他競技の選手も参考

「自分の気持ちを言葉で表すのが、あまり得意ではない」と話す宮下にとって、ノートは自分の思いをいったん整理できるメリットがある。「大事な大会の前には、意識を高めていくために『あと○日』とカウントダウンを書く」といった工夫も怠らない。林田は、他の競技で活躍するアスリートの考え方や取り組みを記したりもする。「最近はプロ野球の大谷翔平選手(日本ハム)のことを書きました。それと、よく書くのは『自分らしく』という言葉。周りの目を気にしすぎてうまくいかないとき、自分自身に言い聞かせます」

ノートに書くことで、絡み合った糸をほぐすように一つ一つの課題を克服し、林田と宮下は自分たちのテニスを取り戻していった。(文・写真 小野哲史)

インターハイ前の宮下のノート。あらためて今ある環境に感謝するとともに、「自分に魔法をかける」という言葉で暗示し、モチベーションを上げようとしている。
ある試合後の林田のノート。技術や戦術の反省だけでなく「上級生がだらしない」「どういうつもりで日本一とろうとしてるの?」と自身を叱咤(しった)する言葉が並ぶ。
インターハイ前と、2冠を達成したときのノート
【TEAMDATA】
1974年創部。部員25人(2年生13人、1年生12人)。全国選抜大会優勝3回(1981、2013、16年)、インターハイ優勝2回(16、17年)、国体優勝3回(12、16、17年)。部訓は「心が技術を超える、誰からも応援される選手になる、勝つことより大切なことがある」

 

林田リコ
【はやしだ・りこ】
1999年9月17日生まれ、東京都出身。身長166cm。後衛。埼玉・広島中時代は全国中学校大会出場。5月の全日本シングルスで3位。2017年度のナショナルチームに選ばれた。

 

宮下こころ
【みやした・こころ】
2000年2月22日生まれ、石川県出身。身長166cm。前衛。石川・中能登中時代は全国中学校大会でベスト8。5月の全日本シングルスでベスト32。2017年度のU-17日本代表。