「はいよろこんで」で大ブレイクしたアーティストのこっちのけんとさん。どんな高校生だったのか聞くと、受験に失敗し落ち込んだ状況を変えたい一心で、勉強に打ち込んでいたという。どうやって前向きに自分を変えていったのか。高校生記者が聞いた。(取材・赤澤寧音、マッコムズ健也、水上莉緒=高校生記者、構成・中田宗孝、写真・幡原裕治)

「めっちゃ真面目」だった高校時代

―高校生のころはどんな生徒でしたか。

めっちゃ真面目でしたね! 勉強を頑張るタイプで、放課後は校内の自習室に通う日もありました。勉強中に分からない箇所があれば、担任以外の先生方にも積極的に質問しにいくような生徒でした。

1年生のときは、ちょっとやんちゃなグループの子と仲が良かったです。その中でも真面目な方の生徒だったので、先生に注意されそうになると「ちょっとそれはやめとこうか」と注意するような立ち位置でした(笑)

こっちのけんとさん

高校受験に失敗「本当の居場所はここじゃない」

―勉強に熱を入れたのは、早くから大学進学を考えての行動でしょうか。

ですね。実は高校は、すべり止めで合格した学校に入学したんです。中3のときの高校受験に失敗した日の出来事は苦い記憶として残っています。不合格を知って、すんなり家に戻る気にもなれず、ものすごく遠回りで帰宅して……。

自分の第1志望ではない高校の入学直後は、「本当の居場所はここじゃない……」なんて、やっぱり気持ちは沈んでいました。

「ここなら学年1位が取れる」と言い聞かせ

―高校入学当初の後ろ向きな感情をどう乗り越えましたか。

「この学校ならテストで学年1位が取れる!」「絶対に学力では上位のはずだ!」と、自己暗示のように自分に言い聞かせたんです。こうしたうぬぼれに近い思い込みを実現させるためには、勉強を頑張らないといけない(笑)。実際、「しっかり勉強しなきゃ」というマインドセットになりましたし、机に向かうのが日常になりました。

こっちのけんとさん

友だちもできて学校生活も普通に楽しめていたので、高1の早い段階で前向きな気持ちになれましたね。

ダンスが「自分を表す強み」になった

―高校時代に打ち込んでいたことはありますか。

学校外でダンスレッスンを受けていて、一番力を入れてました。ダンスは小4からやっていて、高校受験中は休んでいたんですけど、高校生になって再開して高3まで続けました。

ダンスが自分を表す強みになったんです。クラスメートからも「ダンスができる人」と思われていましたし、体育祭の応援団の振り付けを頼まれて取り組みました。

文化祭のステージで歌を披露

―現在につながる音楽活動はしていましたか。

高3の文化祭では、同級生たちと軽音楽バンドを組んで、僕はボーカルとして参加しました。

音楽を始めたきっかけは、小6のときに友だちが演劇用に作った曲の歌を僕が担当したことだったんですけど、高校生のころは、歌よりもダンスにハマっていましたね。ちなみに、文化祭限定のバンド名は「ばらん(お弁当の具材を仕切る緑のギザギザ)」でした。

―緑色がトレードマークですもんね!

バンド名も偶然、「緑色」関連でした(笑)。

インタビューをする高校生記者たち

「ネットの情報」に敏感だった

―高校時代にやっておいてよかったことは。

パソコンに関する知識です。パソコンの周辺機器に詳しくなれたし、タイピングの速さも身に付けられた。

あと、ネット情報も当時の高校生の中ではアンテナを張っていたほうだと思う。僕は高校生のときにヒューマンビートボックスやボイスパーカッションを趣味の一つとしてやっていましたが、YouTubeでヒューマンビートボックスをしていたころのHIKAKINさんの活動もイチ早く注目していました。

「夢をあきらめた」共通点があった

―新曲「けっかおーらい」は、TVアニメ『ヴィジランテ -僕のヒーローアカデミアILLEGALS-』のオープニングとしての書き下ろし曲ですね。制作はどう進めていきましたか。

僕は「ヴィジランテ」の主人公との共通点があったんです。僕らは「大きな挫折」を経験してる。このアニメの主人公は、ヒーローになる夢をあきらめてからの物語。一方の僕は、大学時代から始めたアカペラ活動を就職後も続けたのですが、「歌を仕事にするのは無理だな」と一度挫折したんです。

だから「ヴィジランテ」の主人公にとても感情移入ができ、曲のイメージが膨らみました。アニメの世界観とアーティストとしての僕自身との両方のいいとこ取りができた1曲に仕上がった手応えがあります。

―では今作は、メロディーが先にできたのですか。

歌詞が先でしたね。誰目線の歌詞にするかを熟考し、僕ら視聴者から見える「ヴィジランテ」の主人公の横顔だったり背中だったりを言葉で表現しました。そして、人間味あふれる主人公のキャラクター性も歌の2番以降で語っているので、ぜひフルで聴いてほしいですね!

こっちのけんと

1996年6月13日生まれ。大阪府出身。2022年、配信シングル「Tiny」をリリースし、アーティストデビュー。24年、6thシングル「はいよろこんで」が大ヒット。同年、「輝く!日本レコード大賞」の最優秀新人賞を受賞し、「NHK紅白歌合戦」にも初出場を果たす。

9thシングル「けっかおーらい」

(C) 古橋秀之・別天荒人・堀越耕平/集英社・ヴィジランテ製作委員会

音楽ストリーミングサイトなどで配信中。TVアニメ『ヴィジランテ -僕のヒーローアカデミアILLEGALS-』オープニングテーマ。