データネット実行委員会(ベネッセコーポレーション・駿台予備学校共催)による2025年度大学入学共通テストの「情報Ⅰ」の問題分析は次の通り。

― 全分野から出題され、設問の状況を丁寧に読み取ることで十分に対応できる問題であった。難易はやや易―

令和4年度に公開された試作問題と同じ出題分野と大問4問による問題構成であった。第1問は比較的問題文の短い、セキュリティ・ネットワーク・情報のデジタル化・情報デザインからの4小問であった。第2問はA・Bに分かれた中問形式であり、Aではレシートに印字されるデータの特徴と取り扱い、Bでは事前に用意すべきおつりのシミュレーションについて出題された。第3問のプログラミングは工芸品を製作する担当の割当てを自動化するアルゴリズム、第4問は観光に関するデータを用いたグラフや図の読み取りについて出題された。試作問題同様、制限時間内に素早く正確に題意を読み取り、解答に結び付ける力が必要であった。

大問数・解答数

令和4年度に公表された試作問題と同じ4大問構成で全問必答。解答数は合計で47。内訳は、第1問が9、第2問Aが9、第2問Bが5、第3問が12、第4問が12。

出題形式

第1問は小問4つからなる小問集合。第2問はAとBの中問構成。全体を通して試作問題の形式と同じだった。各大問の配点も変わらず。

出題分野

情報Iの全分野から幅広く出題された。

問題量

ページ数は32ページ(下書き用紙を除く)。試作問題より1ページ減。

難易度

やや易。

大問分野・配点

第1問「小問集合」 (20点・易) 問1・2は旧情報と共通

小問集合であり、問1はデジタル署名の目的と128ビットのIPアドレスが導入された経緯、問2は7セグメントLEDで表示できる文字列の種類、問3はチェックディジット、問4はマウスカーソルの移動に関するユーザインタフェースについての問題であった。問1は基本的な知識が問われているが、問2以降は問題文を読んで状況を把握し、解答するのに必要なことを理解して解く必要があり、読解力と知識を活用する力が求められた。

第2問「領域融合・モデル化とシミュレーション」 (30点・易) 旧情報と共通

Aでは、商品購入時のレシートに印字された情報をもとにした問題が出された。実用的なテーマであり、解答には特別な知識を必要としなかったが、図に示された情報と商品の流れを正確に把握することが求められた。問4では、問題文に書かれたネットショッピングについての条件を踏まえて、解答する必要があり、戸惑った受験生もいたと思われる。Bでは、おつりとして渡す千円札を何枚用意するかをシミュレーション結果に基づいて答える問題であった。乱数を含む条件のもとでの複数回のシミュレーション結果にはばらつきが生じるということを理解した上で解く必要があった。問1は、シミュレーションの条件を把握する問いであった。問2はシミュレーション結果を10,000回行った結果のグラフから考察する問題、問3は、初期値(千円札)の枚数を20枚にした場合に、起こることがないケースを選ぶ問題であった。おつりを計算するという身近で取り組みやすいテーマであった。

第3問「プログラミング」 (25点・やや難) 旧情報と共通

工芸部の部員が複数の工芸品を分担して製作するために、規則に基づいて製作物を割り当てて、その結果のメール文面を作成するプログラムを作る過程が問われた。問1はプログラム作成の前段階として、図表から担当者と制作日数を考える内容。問2は配列の要素の大小を比較するもの。問3は問2を踏まえてプログラム全体の流れを考えるものであるが、二つの繰り返しと条件分岐のネストがあり、さらに配列が含まれるプログラムを丁寧に読み解いていく必要があった。プログラムは7行(for-ifの二重ネスト)と11行(for-for-ifの三重ネスト)の二つであり、プログラム自体の複雑さは中程度である。また、添字はどちらも1から始まっているため、配列の処理は考えやすかったと思われる。

第4問「データの活用」 (25点・標準) 

観光庁の旅行・観光消費動向調査のデータを扱った問題であった。問1は、扱うデータの尺度水準を把握し、データの全体像を把握するために、旅行目的ごとに棒グラフや帯グラフで傾向を読み取る問いである。問2は、旅行目的ごとに旅行者数との相関分析を行い、2変数同士の関係を読み取る問いである。問3・問4は、単に可視化されたデータを読み取るのではなく、加工されたデータの意味を読み取る思考力を問われる問題であった。全体を通して、分析結果を多面的に解釈することが求められ、各図を構成するデータの特徴に関する情報を問題文から抽出し、それらの情報と「数学I」で学習する散布図および箱ひげ図に関する知識を活用して、図内の値や傾向を適切に判断する必要があった。