データネット実行委員会(ベネッセコーポレーション・駿台予備学校共催)による2025年度大学入学共通テストの「数学Ⅰ,数学A」の問題分析は次の通り。
― 外れ値や仮説検定の考え方、期待値の問題が出題された。難易は昨年並 ―
第2問〔2〕「データの分析」は、新課程で扱われるようになった外れ値に関する問題や、仮説検定の考え方に関する問題が出題された。第4問「場合の数と確率」は、ゲームの参加料の設定を題材に、期待値を活用して設定の妥当性を考える問題が出題された。誘導が丁寧な問題が多く、難易は昨年並。
大問数・解答数
試作問題(令和4年度大学入試センター公表)と同じく大問数は4で、全問必答。第1問および第2問はそれぞれ2中問構成であった。
出題形式
選択肢から選ぶ問題の解答数は、昨年が13~20個であったのに対し、今年は20個であった。第1問〔2〕と第2問〔1〕は対話形式の問題であり、さらに第2問〔1〕は日常の事象を題材とした問題であった。また、第2問〔1〕、〔2〕と第4問で、前設問が正解の場合のみ点が与えられる問題が出題された。
出題分野
昨年と同様、特定の分野に偏ることなく幅広く出題された。
問題量
ページ数は27ページ(下書き用紙を除く)で、昨年より2ページ増加した。
難易
昨年並。
大問別分析
第1問「数と式」、「図形と計量」 (30点・やや易) 〔1〕、〔2〕ともに数学Iと共通
〔1〕は、文字定数a、bを含むxの2次方程式の問題。aまたはbの値を与えて2次方程式の解を求めている。最後にaの値と方程式の解についての必要条件、十分条件を問うている。〔2〕は、三角比の定義・正弦定理を用いて外接円の半径や線分の長さを求める問題。図形的な考察をすることで、計算量を少なくすることができる。
第2問「2次関数」、「データの分析」 (30点・標準) 〔1〕は数学Iと共通、〔2〕は数学Iと一部共通
〔1〕は、噴水の形状を題材にした問題。(1)は、2次関数を決定する問題。(2)は、(1)を利用して、放物線とx軸の交点の位置を考察する問題。〔2〕は、47都道府県における外国人宿泊者数と日本人宿泊者数のデータを扱った問題。(1)(ⅰ)は散布図の読み取りの問題で、傾き10の直線の意味を考えることが重要であった。(ⅱ)は数値データから外れ値を考える問題。四分位範囲の基本的な理解が問われた。(2)は2つのデータの分散と共分散、それらの和の分散について考察する問題。分散や共分散の理解が問われた。(3)は宿泊に関するキャンペーンAとBについて、Aの方が良いと思っている人が多いかどうかを、硬貨を投げた実験結果から判断する問題で、仮説検定の考え方が問われた。試作問題と同様に、新課程で扱われるようになった外れ値と仮説検定について出題された。
第3問「図形の性質」 (20点・やや難)
空間内の五面体と6頂点を通る球面に関する問題。(1)は、3直線が1点で交わることを証明する問題。問題文の誘導に従って思考する力が問われた。(2)は、側面の四角形と球面の交わり部分を考える問題。(ⅰ)では、相似を用いて連立方程式を立てるという誘導、(ⅱ)では、方べきの定理を用いるという誘導があり、それぞれの誘導に従って解き進めればよい。(ⅲ)は、(ⅰ)、(ⅱ)の結果をもとに、角度の大きさに着目して空間内の直線や平面が直交するかを考える問題。空間内の直線や平面の位置関係が題材となっている点は目新しい。
第4問「場合の数と確率」 (20点・やや難)
くじを最大3回引くゲームについて、主催者が負担する金額Xの期待値とそのゲームの参加料Yの期待値を比較して、くじ引き料の設定の妥当性を考察する問題。(1)は、与えられた確率の意味を正しく把握できたかどうかで差がついたと考えられる。(2)と(3)は、期待値を求めるための表があるから、解法や計算で悩む場面は少ない。表を利用して解き進めればよい。求めた期待値を用いて、問題で与えられた判断基準に従って考察する点が目新しい。
過去5年の平均点(大学入試センター公表値)
- 2024年度 51.38点
- 2023年度 55.65点
- 2022年度 37.96点
- 2021年度 57.68点
- 2020年度 51.88点