データネット実行委員会(ベネッセコーポレーション・駿台予備学校共催)による2025年度大学入学共通テストの「生物」の問題分析は次の通り。
―実験を考察させる問題は多かったが、読み取る情報量が減った。昨年より易化―
昨年よりも大問数が1問減り、5大問必答となった。基本的知識を問う設問と与えられた情報をふまえて初見の実験について考察する設問とがバランス良く出題された。考察問題の難易度は昨年と同様であったが、読み取る情報量が減少し、昨年より易化。
大問数・解答数
昨年と比べて大問数は6から5に減少し、昨年26個であった解答数は25個に減少した。
出題形式
文章選択問題を中心に出題された。
出題分野
昨年と同様、特定の分野に偏ることなく、幅広く出題された。
問題量
昨年並。
難易
昨年より易化。
大問別分析
第1問「生物の進化、遺伝情報の発現と発生」 (18点・標準)
苦味受容体の一塩基多型(SNP)について出題された。問1では、神経が刺激の強さの情報を伝える仕組みについて基本的な知識が問われた。問2では、ヒトの苦味受容体の遺伝子に突然変異が起こった順序について、アミノ酸配列の違いから推論することが求められた。問3では、遺伝暗号表をもとにSNPについて推論することが求められた。問4では、苦味受容体の遺伝子の遺伝子型とPTC感受性の関係について、測定結果から考察することが求められた。
第2問「生命現象と物質」 (20点・標準)
タンパク質の構造やアミノ酸の利用と代謝が出題された。問1では、タンパク質とアミノ酸、翻訳の仕組みに関する知識が問われた。問2と問3では、仮説を検証する実験について考える問題が出題された。問2では、遺伝子導入に成功した酵母を、変異体を利用して選抜する手法が問われた。問3(1)では、植物の生体防御に関する仮説について、仮説が正しい場合の結果を予想することが求められた。
第3問「生態と環境」 (20点・標準)
2種類の植物の物質生産の違いについて、複数の図表をもとに判断する内容が問われた。問1は、種間競争と共存に関する基本的な知識を活用する問題であり、問2は、図表をもとに、2種類の植物の特徴を考察する問題であった。問3は、クロロフィルとルビスコの量の季節変化を示す表から、問4は、個体の乾燥重量の変化の図から、光合成速度の変化や物質生産について考察する問題であった。
第4問「遺伝情報の発現と発生」 (18点・標準)
アフリカツメガエルの中胚葉誘導と神経誘導について出題された。問1では、卵形成におけるDNA量や核相などの変化について、正確な知識が問われた。問2では、中胚葉誘導の仕組みを調べるために行った二つの操作について考察することが求められた。問3では、外胚葉から神経組織が形成される際に必要な2種類のタンパク質の働きを、実験結果をもとに考察する力が求められた。問2、問3は問題演習経験の多い受験生にとって取り組みやすい典型的な問題であった。
第5問「生物の環境応答」 (24点・標準)
植物の環境応答について幅広く出題された。Aでは、種子発芽と花芽形成について出題された。問1では、種子の発芽に関する基本的な知識が問われた。問2は、フロリゲン遺伝子の発現量と日長のグラフから知識を活用して考察する問題であった。問3は、イネの品種改良を題材に遺伝に関する知識を活用して、それぞれの事例を考察する問題であった。Bでは、重力屈性とオーキシンについて出題された。問4は、重力屈性についての実験結果をもとに考察する問題であった。問5では、茎の重力屈性についての基本的な知識を用いて、子房柄が示す現象を説明する仮説を組み立てる力が求められた。
過去5年の平均点(大学入試センター公表値)
- 2024年度 54.82点
- 2023年度 48.46点
- 2022年度 48.81点
- 2021年度 72.64点
- 2020年度 57.56点