データネット実行委員会(ベネッセコーポレーション・駿台予備学校共催)による2025年度大学入学共通テストの「国語」の問題分析は次の通り。
―第1・2問は単一テキストとなり、新設の第3問が言語活動に特化。難易は昨年並―
大問数・設問数は昨年より増加したが、解答数は変更なし。近代以降の文章の3大問では、第1・2問は単一テキスト型となり、複数テキストや言語活動の設問は第3問に集約した形。古典の2大問は複数テキスト型での出題。大問数は増えたが、大部分が4択の設問となったこともあり、難易は昨年並。
大問数・解答数
大問数は4から5に増加。設問数は25で昨年から2問増。解答数は38で昨年から変更なし。
出題形式
第1問は、観光に関する単一の論理的文章からの出題。第2問は、二〇〇五年発表の、単一の文学的文章からの出題。第3問は、わかりやすい言葉づかいについて自分の考えを書くという課題を受けてまとめられた文章と資料からの出題。第4問は、もののけとそれに苦しめられている女性が登場する、2本の古文からの出題。第5問は、学問に関する『論語』の一節とその注釈書、および読書に関する日本漢文からの出題。
出題分野
近代以降の文章3題、古文1題、漢文1題という構成であった。第3問(近代以降の文章)が新設された。
問題量
第1問は3800字。第2問は4300字。第3問は【文章】が660字、【資料I】がグラフ、【資料II】が400字、【資料III】が図、メモ。第4問は【文章I】が620字、【文章II】が420字。第5問は【文章I】が107字(28字、79字)、【文章II】が92字であった。
難易
昨年並み
大問別分析
第1問「近代以降の文章」 高岡文章「観光は『見る』ことである/ない――『観光のまなざし』をめぐって」 (45点・やや難)
「観光」をテーマとする社会・文化論。これまでのような複数テキスト・生徒の学習場面といった出題はなく、単一テキストからのオーソドックスな出題だった。本文の分量はほぼ昨年並。内容的にはやや硬質で、この種の評論を読み慣れていないとやや手ごわく感じられたかもしれない。設問は、問1が漢字、問2~6が傍線部に関する読解設問という構成。問6は本文全体を踏まえた解釈が求められた。センター試験・共通テストでの評論問題を踏襲しつつ、文章展開・構成や表現の設問、複数テキスト等の設問を外し、選択肢を4択とすることで、若干のスリム化を図った形だといえる。
第2問「近代以降の文章」 蜂飼耳「繭の遊戯」 (45点・標準)
現代詩人の書いた小説からの出題。本文の分量は昨年よりも増加したが、複数テキストの形での設問はなく、比較的オーソドックスな出題であった。昨年出題された語義を問う設問はなかった。問5が表現に関する設問で、ほかの設問は登場人物の様子や心情を状況と関連付けて読み取らせるものであった。
第3問「近代以降の文章」
【資料I】国立国語研究所『外来語に関する意識調査(全国調査)』/【資料II】国立国語研究所「外来語」委員会編『分かりやすく伝える外来語言い換え手引き』/【資料III】NHK放送文化研究所『放送研究と調査』2022年12月号 (20点・標準)
与えられた課題に対して、いくつかの資料をもとに書かれた【文章】についての問題であり、その点では事前に提示された令和7年度大学入学共通テスト試作問題第B問に近いものといえる。公表されていた試作問題より分量は少なかったが、設問要求の素早い把握のもと、どの資料をどのように用いるかの判断が求められた。またすべての設問が、【文章】を適切な形に加筆・修正するといった、表現活動に関わっている点で、新課程を意識した出題となっていた。
第4問「古文」
【文章I】『在明の別』/【文章II】『源氏物語』若菜下の巻 (45点・標準)
本文は【文章I】が『在明の別』、【文章II】が『源氏物語』で、いずれも平安時代の物語文。本文の分量は昨年とほぼ変わらない。選択肢は、問2の敬語の設問のみ5択だった。問1・問2の知識問題は基本的なものが問われていた。問3は、【文章I】と【文章II】を比較する生徒の言語活動の場面が設定され、いずれの枝問も登場人物の心理や言動を問う形で本文の解釈を求めるものであった。
第5問「漢文」
【文章I】『論語』、皆川淇園『論語繹解』/【文章II】田中履堂『学資談』 (45点・標準)
『論語』と江戸時代の漢学者による注釈(【文章I】)、およびその弟子による読書論(【文章II】)の組合せ。問2では『論語』の記述を注釈に従って解釈すること、問6では【文章I】と【文章II】の考え方を比較することが求められており、昨年同様、複数テキストの関係性を強く意識した出題であった。
過去5年の平均点(大学入試センター公表値)
- 2024年度 116.50点
- 2023年度 105.74点
- 2022年度 110.26点
- 2021年度 117.50点
- 2020年度 119.33点