データネット実行委員会(ベネッセコーポレーション・駿台予備学校共催)による2025年度大学入学共通テストの「公共,倫理」の問題分析は次の通り。

― 新課程で追加された記憶や認知が扱われ、思考力が求められる問題も多く出題された。難易は昨年並 ―

「地理総合/歴史総合/公共」の『公共』と「公共、政治・経済」との共通問題であった。倫理では、新課程で新たに追加された認知に関する心理学分野からの出題もあった。思想と具体例を結びつける問題や論理的思考力が求められる問題も出題され、多様な資料を用いて考察する問題も多くみられた。難易は昨年の倫理並。

大問数・解答数

大問数6、解答数33個。第1問・第2問は、『公共』と「公共、政治・経済」との共通問題が出題され、第3問から第6問は倫理分野からの出題であった

出題形式

昨年の倫理と同様、文章選択問題が中心の出題構成に大きな変動はなく、出題形式もバランスのとれた構成であった。6択の問題が増加(4→8)し、7択や8択の問題も出題されたが、昨年の倫理で1つあった9択の問題は出題されなかった。原典資料も用いられ、読解力や論理的思考力が求められる問いが目立った。また、連動型の出題もみられた。

出題分野

特定の分野に偏ることなく幅広く出題されたが、昨年の倫理と比べて、分野の構成に変化があった。第1問・第2問は公共の内容から出題され、第3問は源流思想と西洋思想分野からの出題、第4問は日本思想分野から出題された。第5問は、新課程で新たに追加された認知に関する心理学の分野が、現代の諸課題や思想と絡めて出題され、第6問は現代の諸課題分野が思想と絡めて出題された。

問題量

昨年の倫理並。

難易

難易は昨年の倫理並。

大問別分析

第1問「男女共同参画の推進」 (12点・標準) 

『公共』「公共、政治・経済」と共通問題。大問全体を通して、男女共同参画の現状と制度改革を中心に、人権などの学習事項の理解が問われた。問2では性別役割意識の性別・年代ごとの比較が出題された。

第2問「公共空間の持続的な形成に向けて」 (13点・標準) 

『公共』「公共、政治・経済」と共通問題。大問全体が、公共空間の在り方をテーマに設定した生徒たちが探究学習を進めていく構成であった。問1ではハーバーマスとアーレントの思想の理解が問われた。問3と問4では哲学カフェやICTをテーマに、抽象的な概念や構想を具体例に当てはめる出題がみられた。

第3問「芸術と宗教について」 (28点・やや難) 

源流思想・西洋思想分野を中心に出題。問5は、仏教に関する詳細かつ分野をこえた多面的な知識が求められ、受験生は判断に苦しんだのではないか。問9は、場面1~3の会話の趣旨と知識の両方を求める問題で、どの選択肢についても正答を積極的に選びにくく、やや難しかった。

第4問「外来思想と伝統」 (15点・標準) 

日本思想分野から、幅広く問われた。問2は、親鸞の「悪人正機」についての思想が理解できているかがポイントであった。問5は、レポート中の「雑居」という用語について、加藤周一と丸山真男の判断に迷った受験生も多いだろう。

第5問「記憶と認知」 (16点・標準) 

新課程で新たに追加された認知に関する心理学の分野を中心に出題された。問3は、思想家の思想とクリティカル・シンキングを対応させた問題で、新しい心理学の用語に戸惑った受験生もいたかもしれない。問5は、災害時における認知バイアスについて考察し、環境整備の方向性とそこから導かれる具体的な対処法を選ぶ連動型の問題であった。

第6問「平和の実現について」 (16点・標準) 

現代の諸課題分野が思想と絡めて出題された。問2は、会話の文脈を踏まえて、フーコーの近代化に関する知識と結びつけて考えることが求められた。問4は、会話のなかで提示された3つの特徴すべてに合致する事例を選べたかがポイントであり、解答に時間がかかったと思われる。

【参考】過去5年の「倫理」の平均点(大学入試センター公表値)

  • 2024年度 56.44点
  • 2023年度 59.02点
  • 2022年度 63.29点
  • 2021年度 71.96点
  • 2020年度 65.37点