データネット実行委員会(ベネッセコーポレーション・駿台予備学校共催)による2025年度大学入学共通テストの「地学」の問題分析は次の通り。

―地学における観測と観察や測定方法について幅広く問われた。昨年よりやや難化 ―

第1問では地学における測定方法や観測機器について、昨年と同様に分野横断形式で出題された。第2問では地震波の伝わり方についてのやや複雑な計算問題が出された。第4問では旅行を題材とした気象・海洋についての知識が問われた。全体的に正確な知識と深い理解が必要な問題が多く、昨年よりやや難化。

大問数・解答数  

大問数5、解答数27個は、昨年から変更なし。

出題形式

語句選択問題を中心に出題された。

出題分野

昨年と同様、特定の分野に偏ることなく、幅広く出題された。

問題量

昨年並。

難易

昨年よりやや難化。

大問別分析

第1問「観測機器と測定方法」 (20点・標準) 

観測・観察・測定による結果、地質調査で用いる機器の使い方について問われた。基本的な出題もみられ、教科書の図やグラフを丁寧に理解していれば解答できたと思われる。問1は恒星からの光を分光して現れる電磁波の種類が問われた。問2は関東(北半球)と南磁極での磁石と水平面のなす角度を選ぶ問題であった。問3はクリノメーターを用いた走向と傾斜の測定法が問われた。問4は斑れい岩の偏光顕微鏡写真から3種類の鉱物の晶出順を選ぶ問題で、写真が使われていた点が目新しい。問5はラジオゾンデ観測で得られた夏と冬の風速の鉛直分布と、観測した日の300hPa等圧面高度分布から夏のものを選ぶ問題であった。

第2問「固体地球」 (15点・標準) 

地磁気、地球の自転、地震波の観測というさまざまな分野から出題された。問2は天文分野の知識を必要とする、時刻に関する問題であった。問3は与えられた情報を正確に理解し、選択肢の中からグラフのデータに合うものを見つけるという目新しい形式の問題であった。解法によっては複雑な計算となり、戸惑った受験生もいたと思われる。

第3問「変成作用とマグマ、地質図、地球の生命と環境変動」 (25点・標準) 

Aの問1は変成作用における変成鉱物の種類について問われた。Bは地質図に関する基本的な問題であった。問3は走向、傾斜の読み取りと、断層の活動時期についての問題であった。問4は地層の形成順序についての問題であった。問5は放射性年代において用いられる鉱物と年代測定法について問われた。Cは教科書にある正確で詳細な知識を必要とする問題が出された。問6は地球の歴史における各年代での出来事についての問題であり、問7は第四紀の氷河期についての問題であった。

第4問「気象、海洋」 (21点・標準) 

旅行を題材とした出題で、教科書をもとに基本的なことをおさえている受験生であれば、全体に取り組みやすかったと思われる。問1は温帯低気圧の風向・気温に関する出題であり、地上の風について等圧線に対する風向き、前線を境とする気温の違い、適する地点の組合せの三つから判断する問題であった。問2の大気の安定・不安定、問6の地衡流については、教科書にある考え方がそのまま問われた。問3の相対湿度の計算も典型的で難しくはない。問4は黒潮の特徴、問5は潮流と高潮に関する出題であり、基本的な知識が問われた。

第5問「宇宙」 (19点・やや難) 

Aは赤外線天文衛星によって観測された赤外画像をもとに、原始星や分子雲に関する正確な知識が求められた。問1は原始星が進化していく段階を可視光線で観測するとどのように写るかが問われた。問3はウィーンの変位則を用いて、天体の表面温度を求める問題であった。Bは連星と系外惑星系についての考察問題であった。問4は分光観測についての基本的な問題であった。問5は連星系(系外惑星系)の天体の運動についての物理的な理解と、食変光星の明るさの変化についての知識が必要となる総合的な問題であった。

過去5年の平均点(大学入試センター公表値)

  • 2024年度 56.62点
  • 2023年度 49.85点
  • 2022年度 52.72点
  • 2021年度 46.65点
  • 2020年度 39.51点