推しのぬいぐるみを持ち歩いたり写真を撮ったりする「ぬい活」。SNSでも頻繁に見かける、「推し活」の一つだ。ぬい活にはどのような魅力があるのか、推し活をする高校生3人に語ってもらった。(和田七望、文中は仮名)
「ぬいは推しの分身」筆箱にも入れて
「ぬい活」とは、好きなアーティストやキャラクターなど「推し」のぬいぐるみを持ち歩いたり、その写真を撮ったりする推し活のこと。ぬいぐるみは「ぬい」「推しぬい」とも呼ばれる。100円ショップやバラエティーショップにも、着せ替え用の服や持ち歩き用ポーチなど「ぬい活」のグッズが売られていて、高校生にも人気の推し活となっている。
ユメさん(1年)は、エンタメユニット「すとぷり」の莉犬さんや、声優とラップを組み合わせたコンテンツ「ヒプノシスマイク」の夢野幻太郎を推していて、日常的に推しぬいを持ち歩いているという。学校では筆箱に小さな推しぬいを入れていて、それがきっかけで友達ができたこともある。
「アクスタ(アクリルスタンド)やアクキー(アクリルキーホルダー)は後ろにデザインがないけれど、ぬいは全方向作り込まれているから、後ろ姿も映えます。ふわふわの触り心地でぬくもりがあるところも魅力です」
ユメさんにとって、推しぬいは「推しの分身」のような存在だ。「推しをいろいろなところに連れていってあげたい」という思いで日々持ち歩いている。「メンバーカラーでミサンガを作って、ぬいぐるみの手と自分の足首に着けています。『疑似おそろい』みたいな感じです」
「推しをお祝いしたい」カバンにつけて登校
ユウナさん(2年)は、アイドルグループ「なにわ男子」の西畑大吾さん、「Aぇ!group」の正門良規さんを推している。推しにうれしいことがあったとき、通学カバンに推しぬいをつけて登校する。
「ドラマや舞台の出演が決まったとき、シングル発売のときなどにカバンに付けています。お祝いしたい気持ちもあるし、『こんなことが決まったよ』って少しでもいろいろな人に推しを知ってほしいんです」
カバンに付けるときは、推しぬいのボールチェーンが外れないよう、100円ショップの落下防止用グッズで工夫している。持ち歩いて他の人に見せられるのも、ぬい活の魅力だ。
「アクスタはカバンに付けられないので持ち歩きにくくて、個人的にはあまり好みじゃないんです。ぬいはカバンにつけずに学校に持っていくこともあります。落ち込んだときや緊張したときにぬいを見ると『よし、やるぞ』『頑張ろう』と思えます」
「ぬい」を手作り、着せ替えも楽しむ
ソラさん(2年)は、オタク歴約8年。今年、オリジナルキャラクターのぬいぐるみを作ったという。手芸ショップでぬいぐるみのボディーや表情のパーツなどを購入し、3日ほどで完成させた。「自分で描いたオリジナルキャラクターのイラストを『ぬい』にしました」
「手芸が得意ではないのですが、パーツはアイロンで貼れるので手軽に作れます。服は通販で買っていて、着回しさせやすいものを選んでいます」。ぬいぐるみの魅力は、着せ替えができることと、存在感があるところだ。
「ペットや家族のような、一緒にいると落ち着く存在。『一緒に日々を過ごしている感』があるのが魅力です。前は写真に撮らなかった風景でも、『ぬいと一緒に来たときの思い出』として、写真に収めるようになりました」
ただのぬいぐるみじゃない「高校生活の心の支え
高校生たちは、「推しの分身」や「家族」のような存在として、愛着をもってぬいに接していた。ぬいの存在そのものに励まされたり、癒やされたりしながら同じ時間を共有しており、ぬいは高校生活に寄り添ってくれる心の支えとして大切な存在となっているのだ。「持ち歩く」のではなく「連れていく」など、人に対して使う言葉でぬいと過ごす日々を語ってくれたことからも、それがよく分かる。
ぬい活は、何気ない毎日をほんの少し「特別」に変えてくれる、身近な推し活のようだ。