大学の入試方式には、一般選抜、総合型選抜、学校推薦型選抜(指定校制・公募制)という3種類があり、それぞれ異なる特徴を持つ。編集部には高校生から「どの入試方式で受ければいいか分からない」という声が寄せられた。それぞれの入試方式に向いている人や必要な準備を、進路指導アドバイザーの倉部史記さんに聞いた。(安永美穂)

自分の強みに合った入試方式を選ぶ

―一般選抜、総合型選抜、学校推薦型選抜は、それぞれどんな人に向いているのでしょうか?

一般的に、それぞれの入試方式に向いているのは以下のような人だといえます。

■一般選抜

・基礎学力がしっかり身についている人

・国公立大学を第1志望とする人

・併願校がたくさんあり、合格した学校の中から進学先を選びたい人

■総合型選抜

・高校の探究活動に手応えを感じた人

・志望動機や学びたい学問・テーマが明確な人

・自己PRに使える実績や素質を持っている人

■学校推薦型選抜

・高校の評定平均が高い人

・生徒会や部活動などでの実績がある人

・欠席日数が少ない人

どの方式が向いているのか分からない人は、一般選抜に向けた準備を進めておき、総合型選抜や学校推薦型選抜で自分がチャレンジできそうな入試方式が見つかれば受験を検討してみるとよいでしょう。

―高3の6月で志望校が決まっていない場合、一般選抜、総合型選抜、学校推薦型選抜のうち、どの入試方式で受けるのが現実的でしょうか?

確実に年内に合格を決めたいのであれば、指定校推薦枠のある大学から自分が出願できるところを選ぶという方法もあります。ですがその場合は、自分が本当に学びたいことを学べる大学・学部なのかをしっかり検討しておくことが大切です。合格することを優先するあまり、あまり興味のない大学・学部に進学すると、後悔しかねません。

探究活動に打ち込んできた人や学びたい学問が明確な人は総合型選抜、評定平均が高い人や課外活動の実績がある人は学校推薦型選抜を検討してみてもよいでしょう。国公立大学を第1志望とする人は定員が多い一般選抜を目指すことが多く、基礎学力がある人も一般選抜に向いているといえます。

経験から「何を学んだか」が重要

―総合型選抜は自己PR書を提出することが多いです。課外活動や部活での活躍などは、総合型選抜で使える「ネタ」になるのでしょうか?

総合型選抜では、大学側は「受験生が進学した後の成長の可能性を見たい」と考えています。そのため「生徒会長を務めた」「部活で大会に出場した」といった実績だけではなく、そこからどのような学びを得て、それを大学での学びにどのように生かせるのかを自分の言葉で語れるようにしておくことが重要です。

試合で負けた経験や失敗経験も、その経験から学んだことを言語化できれば、立派な「ネタ」になりますよ。

自己PRは「何を学んだのか」を書こう

興味を持ったことを書き出そう

―総合型選抜の「ネタ」は高3の6月から準備し始めて間に合うのでしょうか?

志望理由書に書く内容を練り上げていく作業は今からでも間に合います。まずは幼少期から今までの体験や、自分が興味を持ったことなどを紙に書き出してみてください。大学で学びたい内容に興味を持ったきっかけについても、具体的なエピソードを交えて語れるようにしておきましょう。

勉強や課外活動などの記録をまとめた「eポートフォリオ」を高校で作成している人は、参考にしてみるとよいです。志望する学部で学ぶ内容に関連した本を読んでみることも、ネタ作りに役立つはずです。

なお最近では、高校での探究学習の取り組みに注目する大学が少なくありません。探究学習の成果を評価する入試方式も増えていますし、そうでなくても自己PRや志望理由につなげられるケースは多いはず。高校で取り組んだ内容や、そこから気づいたことなどを整理しておくと良いでしょう。

オーキャン参加が出願条件になることも

―「夏休み前までにこれだけはやっておくべき」ということはありますか?

大学の募集要項を確認し、どのような入試方式があるのかをチェックしておきましょう。入試方式によっては、夏休みのオープンキャンパスへの参加が出願条件になることもあります。現時点で分からないことがあれば、それをまとめておき、オープンキャンパスの個別相談で質問してみるのもよいでしょう。

 

倉部史記(くらべ・しき)さん

進路指導アドバイザー、高大共創コーディネーター。追手門学院大学客員教授。高校生の「ミスマッチのない志望校選び」を支援するために、全国の高校での進路講演や高校・大学の教職員向け研修などを行う。著書『ミスマッチをなくす進路指導』(ぎょうせい)など。

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