高校生たちを魅了する「PRODUCE 101 JAPAN」(通称日プ)シリーズは、アイドルになりたい若者が歌やダンスなど過酷なテストに挑むサバイバル型のオーディション番組だ。紅白にも出場したJO1など人気アイドルグループを輩出してきた。高校生がハマる理由を探った。(椎木里咲)

視聴者投票でデビューメンバーが決まる

「PRODUCE 101 JAPAN」シリーズ(通称「日プ」)とは、「練習生」と呼ばれる101人の候補者がデビューを目指して奮闘するオーディション番組だ。視聴者投票によってメンバーを絞り込み、最終的に勝ち残った11人がグループを組んでデビューとなる。

元アイドルからダンスや歌の未経験者まで、参加者は十人十色。デビューが確実視されているような練習生が脱落したり、反対に低順位の練習生が一つのパフォーマンスで注目を浴び大量のファンを獲得したりと、最後まで誰がデビューするか全くわからないのが醍醐味(だいごみ)だ。

これまでに3度開催され、第1弾(日プ1)では「JO1」が、第2弾では「INI」(日プ2)という男性アイドルグループが誕生。そして昨年開催された第3弾(日プ3)はシリーズ初のガールズグループオーディションとなり、4月17日にデビューした「ME:I」(ミーアイ)を生み出した。

「どんな人間」かが分かる

「オーディション番組は、その人の本質が分かるんです」

そう語るのは、熱心に「日プ2」を見てきた高校生視聴者のアイさん(仮名・3年)だ。番組では歌やダンスといったパフォーマンス本番の様子だけでなく、ステージに上がるまでの練習風景や他の練習生とぶつかる様子、うまくできず思い悩む様子も放送される。なかなか振り付けが覚えられず周囲についていけない、パフォーマンスで自分をどう魅せていけばいいか分からない……番組にいるのは、ただ「キラキラ輝くアイドル候補生」ではなく、もがきながらもデビューをつかみ取りたいと壁に立ち向かう練習生だ。

「裏側も見られるから、その人がどんな人なのかが分かって、人間として信頼できるんです。努力している人を応援するのは楽しくて、私も頑張ろうという気持ちになれます」

ハルさん(仮名・3年)は「日プ3」を見ながら、練習生の姿を自分自身に重ねたという。当時、課外のプレゼンテーション大会に出ていたというハルさんは、順位がつくプレッシャーに苦しめられた。「キラキラしたパフォーマンスの裏には、血のにじむような努力や、プレッシャーとの戦いがある。練習生が同年代ということもあり、自分の状況にも重なって勇気づけられました」

「日プ3」風の衣装を着たハルさん(ハルさん提供)

脱落も夢への第一歩

オーディション番組に付きものなのが「脱落」だ。マキさん(仮名・3年)が「日プ3」で応援していた八田芽奈さんは、ファイナルステージに進む直前で脱落した。順位が発表されたときは、今までの八田さんのステージを思い返しては「脱落」という現実を突きつけられ、落ち込んだ。しかし、「ここから広がる夢もある」と話す。

「もしもこれから他の番組や雑誌で見かけたら『日プ3の芽奈ちゃんだ!』と話題になる。デビューできなくても、輝くきっかけになると思うんです」

マキさんの意見にうなずくのはアイさんだ。「『日プ2』で脱落した練習生が、先日別のグループのメンバーとしてデビューしたんです。きっと彼はINIじゃなくて、そのグループに入る運命だったんだと思います」

デビューメンバーと脱落したメンバーの交流も続いており、TikTokではしばしば一緒に踊る様子がアップされることもある。「交流が続いている、そんな姿を見るとうれしいです」(アイさん)

「私も頑張ろう」勇気もらえる

3人は番組からとても良い影響を受けたという。アイさんは「テスト勉強は『〇点以下だと脱落だ!』と思い込ませて自分を奮い立たせています(笑)」と、勉強時間が増えた。

今年大学受験を予定しているマキさんは「行きたい大学が、自分のレベルよりも上なんです。でも、できなかったことができるようになる練習生を見たら、頑張ろうって思えます。今はスケジュールを立てて無駄な時間を減らすなどの工夫をして、勉強に励んでいます!」と笑顔で話す。

ハルさんが影響されたのは「自信」だ。「順位がついても、自分自身の価値が変わるわけじゃない。何位でも輝く練習生を見て、そう思えました」

練習生たちは悩み、もがき、目標に向かって努力する。輝くために重ねる努力に、高校生たちはひかれているのだろう。