「総合型選抜(AO入試)」「学校推薦型選抜」など主に年内に行われる入試を実施する大学が年々増加している。「自分に向いている入試はどちらなのか迷う」「そもそも違いがわからない」人に知ってほしい各入試の特色を、早稲田塾の中川敏和さんに聞いた。(安永美穂)

意欲と情熱問われる「総合型」

―そもそも「総合型選抜」とは、何を見られる入試形式ですか?

総合型選抜は、大学がアドミッションポリシー(大学側が求める学生像などをまとめた入学者受け入れ方針)に合う学生に出会うために、書類審査や面接、小論文、グループディスカッション、プレゼンテーションなどのさまざまな試験を組み合わせて、一人ひとりを丁寧に評価する入試方式です。「その大学で何を学び、将来にどう活かしたいのか」という意欲や情熱が重視されます。

3年間の活動重視の「学校推薦型」

―「学校推薦型選抜」は?

学校推薦型選抜は主に「指定校制」と「公募制」の2種類があります。「指定校制」は、大学が指定した高校に推薦枠が与えられ、校内選抜を通過して推薦されればほとんどのケースで合格となります。

「公募制」は、大学の出願条件を満たせばどの高校からでも出願が可能で、試験内容は書類審査や面接、小論文などさまざまです。総合型選抜との最大の違いは、いずれも「学校長からの推薦が必要」であること。学校内の活動が重視されるため、評定平均や出席状況などの出願基準が設けられているケースが多くみられます。

自分に合った入試方式を選ぼう

―総合型選抜、学校推薦型選抜、一般選抜のそれぞれに向いているタイプを教えてください。

総合型選抜に向いているのは、探究心が旺盛で、身近な疑問を調べたり、社会の事象に対して自ら問いを立てて考えたりすることが好きな人です。これまで夢中になったことやこれから研究したいことがある人、校内外を問わず様々な課外活動をしてきた人にとっては、書類や面接で熱意をアピールできる総合型選抜は相性の良い入試方式だと言えます。

学校推薦型選抜の指定校制では、高1から高3までの評定平均や部活など課外活動の実績、生活態度などを総合的に評価して校内選考が行われます。公募制では、評定平均の出願基準が設けられていることが多く、課外活動などの実績が必要となることもあります。いずれも、高1から高い意識をもってコツコツと学習や課外活動などを頑張ってきた人が高く評価される入試方式だと言えるでしょう。

一般選抜は、いわゆる学力試験の成績によって合否が決まる方式です。ただ、大学入学共通テストをはじめとする近年の入学試験は思考力を問う内容に変わりつつあり、知識の丸暗記のみで対応できるものではありません。そのため、やはり高1の頃から地道な学習を積み重ね、探究活動にも主体的に取り組んで思考力などを伸ばしてきた人が有利になると言えます。

あなたにぴったりの入試方法は?

3年になる春休みまでには決めて

―どの入試方式にするかを決定する最適なタイミングは?

高1・高2のうちから、探究学習や部活、趣味など、自分が興味を持てる活動に打ち込んでおくと、総合型選抜や学校推薦型選抜では強みになります。自分の強みは何かを整理したり、それを大学側にどう伝えるかを考えたりする時間を確保するためにも、遅くとも高3になる前の春休みまでには、自分が受験したい入試方式を決めておくことをおすすめします。

■総合型・学校推薦型の代表的な選抜方法

  • ①書類審査

  • 志望理由書…志望大学で学ぶ意義と、その大学で学ぶ適性や学習意欲を記した書類。
  • ポートフォリオ、活動報告書…今までの経験や活動、資格などをもとに自分と大学のマッチングをアピールする。
  • 調査書…高校3年間の学習記録や生活記録が記された高校から発行される書類。
  • ②英語資格試験

  • 出願条件や判定条件に、英検、TOEFL、TOEICなどの民間資格試験を採用している大学も多い。
  • ③小論文

  • 課題論述型…与えられた課題について分析し自分の意見を述べる。
  • 文章読解型…文章を読みながら筆者の意見を読み取り、それに対する自分の意見を論述。
  • 資料分析型…表やグラフが提示され、その問題点や解決策を論述する。
  • ④面接

  • 質疑応答形式…個人形式、グループ形式の2種類。志望理由書やポートフォリオの内容質問や所作を見られる。
  • グループディスカッション形式…受験生数人でテーマに沿った討論を行う。
  • 口頭試問形式…文系学部なら文章を読み内容に関する質問、理系学部なら数学や科学の問題の解説を求められることもある。
  • プレゼンテーション形式…テーマが与えられ当日までに資料を作り発表する。

中川敏和さん なかがわ・としかず 早稲田塾 執行役員・本部長。1997年から東進、早稲田塾で一般選抜、総合型選抜、学校推薦型選抜など、さまざまな大学受験指導を25年間行う。受験生の娘をもつ父親でもある。