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データネット実行委員会(ベネッセコーポレーション・駿台予備学校共催)による2023年度大学入学共通テストの「化学」の問題分析は次の通り。

― 実験を題材にした問題が多く、紫外線の透過率を扱った問題が目新しい。難易は昨年並 ―

文章を読み解く問題や知識を活用する問題が数多く出され、思考力を要した。実験を題材にした問題も多く、グラフを描図させる問題や数値そのものをマークさせる問題も出された。紫外線の透過率から二酸化硫黄の濃度を求める問題が目新しい。難易は昨年並。

大問数・解答数  

大問数5は、昨年から変更なし。昨年29個であった解答数は32個に増加した。

出題形式

語句選択問題、数値選択問題を中心に出題された。

出題分野

昨年と同様、特定の分野に偏ることなく、幅広く出題された。

問題量

昨年並。

難易

昨年並。

大問別分析

第1問「物質の状態と平衡」 (20点・標準)

化学結合、コロイド、蒸気圧、結晶格子について問われた。問2は、寒天を題材としたコロイドの語句選択問題、問3は、水蒸気を含む空気を圧縮し、生成した水の物質量を計算する問題で、気体の状態方程式を用いて正しく計算する必要があった。問4は、CaSを題材としたイオン結晶の結晶格子の問題であった。問4aは、CaSのイオン結晶の配位数と単位格子の体積の選択問題、問4bは単位格子の体積を、40gの結晶の体積から求める計算問題で、求める過程が目新しく思考力を要した。問4cは、限界半径比の問題で、問題演習の経験で差がついたと思われる。

第2問「物質の変化と平衡」 (20点・やや難) 

反応熱、電気分解、化学平衡、反応速度に関する問題が出された。問1は、生成熱から反応熱を計算する基本的な問題であった。問3は、水素、ヨウ素、ヨウ化水素の平衡状態についての計算問題であった。温度一定の条件における平衡移動についての理解がポイントであった。問4は、過酸化水素の分解反応を題材にした問題であった。問4aでは、反応速度と触媒についての基本的な知識問題、問4bでは、発生した酸素の物質量の変化から反応速度を計算する問題、問4cでは、反応速度定数が2倍になったときに生じた酸素の物質量のグラフを考察する問題が出された。

第3問「無機物質」 (20点・やや難) 

フッ化水素の性質、金属イオンの系統分離、金属単体の反応、熱分解反応についての問題が出された。問2は、分離操作の結果より水溶液中に含まれる金属イオンを特定する問いで、系統分離に関する正確な知識が問われた。問3aでは、金属単体の反応の量的関係が問われ、1族元素、2族元素が反応したときに生じる水素の物質量の違いや、金属の反応する質量の違いを考える必要があり思考力を要した。問3cでは、熱分解で生じる気体の種類から反応前の化合物を特定できるかがポイントであった。

第4問「有機化合物、高分子化合物」 (20点・標準)

脂肪族化合物、芳香族化合物、高分子化合物の構造、油脂に関する問題が出された。問1は、反応条件を満たすアルコールの構造式を選ぶ問題、問2・問3は、芳香族化合物、高分子化合物の性質や反応に関する誤文選択問題で、いずれも基本的な知識が問われた。問4は、油脂(トリグリセリド)の構造式や、構成する脂肪酸の示性式の決定に関する目新しい問題で、C=Cの数や脂肪酸の物質量比などから正しく判断できたかがポイントであった。

第5問「物質の変化と平衡、無機物質」 (20点・やや難) 

硫化水素や二酸化硫黄を題材にして、気体の反応、化学平衡と平衡移動、ヨウ素滴定、紫外線の透過率を扱った問題が出された。問1aは、硫化水素と二酸化硫黄の製法や反応を問う基本的な問題であった。問1bは、二酸化硫黄が関係する平衡移動と反応速度に関する問題であった。問2は、混合気体中の硫化水素の体積をヨウ素滴定で調べる問題であった。問3aは、二酸化硫黄のモル濃度を紫外線の透過率を用いて求める問題で、教科書では扱われない目新しい問題であった。与えられたデータをグラフにしてモル濃度を求める必要があった。問3bは、実験装置の条件を変えたときの紫外線の透過率を求める問題で、与えられた条件をよく考えれば導くことができた。

過去5年の平均点(大学入試センター公表値)

  • 2022年度 47.63点
  • 2021年度 57.59点
  • 2020年度 54.79点
  • 2019年度 54.67点
  • 2018年度 60.57点

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