施行3年目となる2023年度の大学入試共通テスト。問題の難易度や平均点の予想と傾向、そして私立大志願者が共通テストを受験するメリットについて、河合塾教育研究開発本部の近藤治さんに聞きました。

難易度は昨年並み、設問数は減ると予想

大学入学共通テスト2022 数学Ⅰより 第1問「数と式」

初年度にあたる2021年度の大学入学共通テスト(以下、共通テスト)は、思ったよりも平均点が高く、想像以上に点数が取れた受験生が多かったです。2022年度は前年度と比べて難しくなるだろうと言われていたのですが、その想定以上に難しいテストとなったのが実状でした。

特に数学は非常に難易度が高く、数学IAは過去最低の平均点だったのが印象的です。また、化学や生物も前年度から大きく平均点が下がるなど、数学や理科が特に難しくなりました。

それを踏まえて2023年度の傾向を考えていきますと、問題の難易度は易しくはならないものの、設問数が減るのではないかと予想しています。例えば2022年度の数学の試験では、時間が足らず解答できなかった受験生が多く、平均点が非常に下がったことを踏まえての予想です。結果的に1問を解くのに考える時間が増えることになるので、数学の平均点はおのずと上がってくるのではないかと考えます。

ほかにも化学や生物のような前年度から大きく平均点が下がった教科についても、数学同様の傾向になるのではないかと考えています。問題の難易度は大きく変わることはないと思いますので、しっかりと対策をしなければならないことに変わりはありません。

国語の傾向が変わる?実用的な文章出題に注意

大学入学共通テスト2022 国語より 檜垣立哉『食べることの哲学』/藤原辰史『食べるとはどういうことか』

気になるのは国語です。共通テストに切り替わる以前に試作問題が2年にわたって作られていたのですが、その問題と比べるとここ2年の国語の問題はマイルドな印象があります。そのため、もしかしたら国語は2023年度では傾向が変わってくる可能性はあるのではないかと考えています。例えば、この2年間で実用的な文章の問題があまり出ていません。そろそろこういった問題の出題があってもおかしくないのではないかと思います。

私大専願者もコスパよくチャンス増やすメリット

2022年度の共通テストでは、出願はしたものの受験をしなかった方の数が非常に多くいました。特に私立大専願の受験生がその多くを占めており、私立大専願者の「共通テスト離れ」が進んでいる傾向にあります。ただ、私立大専願者の方が受験してもメリットが多くありますので、ぜひ共通テストは受けたほうが良いでしょう。

その理由は、私立大学が実施している「共通テスト利用入試」。共通テスト利用入試には大きくふたつの特徴があります。ひとつは、改めて大学まで行ってテストを受ける必要がないこと。そのため、交通費や宿泊費がかからないだけでなく、移動の時間なども取られません。そしてもうひとつは、受験料そのものが安いことです。大学にもよりますが、一般入試の半額程度です。

ほかにも、共通テストを受験しておくだけで、受験できるチャンスは必ず広がります。例えば、万が一コロナに感染してしまい、一般選抜を受験ができなかったときに、共通テスト利用方式を実施している大学ならばそちらで合否を判定してもらえる可能性があります。

共通テストは受験生が最初に受ける本番のテストになりますので、最後の模擬試験のつもりで受けるのも良いでしょう。共通テストに出願したならば、私立大専願者であってもぜひ受験していただきたいと思います。

 
近藤治さん
 
 
学校法人河合塾教育研究開発本部主席研究員。河合塾入塾後、教育情報分析部門で大学入試動向分析や進学情報誌の編集に携わる。教育情報部部長、中部本部長などを経て、2021年4月から現職。マスメディアへの情報発信、生徒、保護者、高校教員対象の講演を多数実施。
 
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