全国の高校生を対象としたファッションデザインのコンテスト「第21回全国高校ファッションデザイン選手権大会(ファッション甲子園2022)」の最終審査会が8月に弘前市民会館(青森)で開催された。デザイン画総応募数2108作品の中から21校33チームが最終審査会へ出場。出場チームは実際に衣装を作成し、ファッションショー形式の審査に挑んだ。優勝は神奈川県の横浜デザイン学院だった。最終審査に臨んだ33作品を紹介する。(写真・ファッション甲子園事務局提供)

「ファッション甲子園2022」当日の様子

こだわりの「かわいい」があふれる服

【優勝およびキラリ賞】単細胞な...(神奈川・横浜デザイン学院)

横浜デザイン学院の作品「単細胞な...」

「自分が今、かわいいと思うモチーフだけを組み合わせ、絶妙なバランス感を大切に考えた」という作品。「球体を細胞に見立てたイメージ」と「『単細胞』の『単純な考え方』という意味」から作品名が生まれたそうだ。ベースの生地にこだわり、ワッフル生地は制作者好みの赤に染めた。

「見て」「着て」楽しい服

【準優勝】gimmick(青森・弘前実業高校)

弘前実業高校の作品「gimmick」

実際には作れない「不可能図形」として有名な「ペンローズの多角形」をあしらった作品。目の錯覚を利用した「見て」「着て」楽しい服を作りたいとデザインしたそう。あえて平面でペンローズの多角形が表現されており、カメラ越しにも見て楽しい作品になっている。

和と洋を「Mix」

【第3位】Mix(愛知・山本学園情報文化専門学校)

情報文化専門学校の作品「Mix」

伝統工芸、そして和と洋の「Mix」を目指した作品。小さな布をつまんで作る「つまみ細工」を取り入れ、華やかでかわいらしい作品に仕上げた。使われた約250個のつまみ細工はすべて手作業で作ったそう。

ガラス細工の繊細さを服で表現

【特別賞 海外ファッションブランド協会賞および審査員特別賞(原由美子賞)】瑠璃も玻璃も照らせば光る(青森・舘田学園五所川原第一高校)

五所川原第一高校の作品「瑠璃も玻璃も照らせば光る」

ガラスに切り込みを入れて文様を描く伝統工芸「江戸切子」。文様の中でも代表的な「矢来文様」を、何色もの違う素材の生地を重ねたものに切り込みを入れて立体的に表現した。

雨粒やアジサイの美しさ

【審査員特別賞(津森千里賞)】梅雨の貴婦人(熊本・熊本工業高校)

熊本工業高校の作品「梅雨の貴婦人」

自分が美しいと感じる「雨粒」や「アジサイ」に着想を得た作品。雨粒は一つ一つ手作り。「作品を通して雨粒やアジサイの美しさを感じてほしい」という思いが込められている。

3種の「天気雨」をグラデーションに

【審査員特別賞(天津憂賞)】雨(大阪・泉尾工業高校)

泉尾工業高校の作品「雨」

「天気雨」を表現した作品。「夜」「曇っているとき」「とても晴れているとき」の3種類の雨のしずくがグラデーションをなす。ビニールで作られたしずくの中には空が表現されている。

新型コロナへの思い込めた作品

【ゲスト審査員特別賞(小湊千恵美賞)】CORONA(埼玉・越谷総合技術高校)

越谷総合技術高校の作品「CORONA」

「新型コロナで苦しむ人々に元気と希望を」「もう一度感染対策への意識高めて」という思いを込めた作品。防護服は2枚の布を重ね、互い違いにつまむことでふくらみや動きを表現している。

【大会総評】「力いっぱい、高校生らしいテーマ」で形作られた衣装

3年ぶりに会場での開催となった本大会。第1回から審査員を務めるファッションディレクターの原由美子審査員は「3年ぶりの会場での開催になったこともあり、一次審査時点ではデザイン画を見ながらどのような作品が出来上がるのか不安があった。しかし、今日の大会で作品を見ると、皆さん力いっぱい、高校生らしいテーマで出来上がっていたので感激した」と総評を述べた。今大会で優勝した作品「単細胞な...」について「とてもきれいな赤でいろんな素材で形を作り、それを見事に組み合わせていた。アートっぽくなりすぎず、全体の雰囲気のバランスが素直にかわいいと思った」と講評した。