2022年4月に高校に入学する生徒から、新学習指導要領に基づく授業を受けることになります。新課程の教育にあわせて、24年度に実施される25年度大学入試から出題教科や内容が変更され、25年1月の大学入学共通テストも、導入から5年目にして大幅に刷新されます。どんな目的で、どのように変わるのでしょうか。駿台教育研究所進学情報事業部長の石原賢一さんに聞きました。(黒澤真紀)

「地理歴史」「公民」「数学」は科目構成が変わり、「情報」が新設

高校の新学習指導要領では、プログラミングやデータ分析を含む「情報」、社会の課題とそれに関する地理的問題を学ぶ「地理総合」、世界と日本の近現代史を学ぶ「歴史総合」、社会の一員としての知識や考え方を学ぶ「公共」が必修となります。

25年1月に実施される共通テストは、今の6教科30科目から7教科21科目に。教科は「情報」が加わるので1教科増えますが、科目は30から21科目に減っています。新設される「情報」について、国立大学受験生には必修となる見通しですが、「難易度を心配することはない」と石原さんは言います。現在の高校学習指導要領でも情報系の科目は課されており、高校教育にとって全く新しい教科ではないためです。

2025年度以降の大学入学共通テストの出題教科・科目。「情報」が新たに加わる

 

国語、数学は試験時間が長く 問題の数、質ともに大幅に変更か

25年の共通テストは、問題数、問題の質ともに大幅な変更があります。

「国語の試験時間が今の80分から90分と10分長くなるので、現代文が3題になるのではないかとみています。数学ⅡBは、範囲が(ゆとり教育以前の)85年から96年までのセンター試験の範囲に戻るのでちょっとつらいかも知れません。試験時間も今より10分長い70分になるので、会話文形式の問題文を本格的に出してくるのではないでしょうか。英語のリーディングは、共通テストの導入に伴って取りやめた整序問題が復活するなど、ライティングの力を問う問題が増える可能性もあります。全体的に問題構成が相当変わるのではないでしょうか」(石原さん)

25年共通テストのすでに予告されている出題教科・科目等を含む試験の実施方針は、23年6月頃に公表される予定です。

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調査書は簡素化、志願者本人の作成書類がより重視

変更があるのは、入試問題だけではありません。大学受験にあたって提出する調査書は、高校の先生が記入する生徒の活動の欄が簡素化され、25年からは生徒が自分で作成する「特に優れた学習成果」がより重視されることになりそうです。そのため、自分で考え、行動できる生徒がよりチャンスをつかめる入試になるでしょう。

文理関係なく幅広い教養を

今後の大学入試を考えるにあたって、社会の変化を抜きに語れません。シンギュラリティ(AIが人間の知性を超える超越点)が社会に与える影響は大きく、何を学んでおけば確実かということは誰にもわかりません。

「今は、いい大学に入ったらその後の将来が保証される時代ではありません。医師、看護師、弁護士、薬剤師、教師など、国家資格が必要な仕事につきたい人以外は、キャリアから逆算して志望校を選ぶのではなく、『好きな学問を学べる大学・学部』を選んでください。大事なのは、文系理系にとらわれず、「学ぶ力」を鍛えることであり、そのためには好きなことを学んだほうがよいからです」(石原さん)

これからの若者は文系理系にとらわれずに、幅広い教養を身につけることが必要とも石原さんは強調します。文系でも数学が必要になり、理系でも国語の力が求められるようになるでしょう。

「これから必要なのは、アカデミックライティング、英語の4技能(読む、書く、聞く、話す)、数学・論理・統計、データサイエンスの4分野です。特に数学が必要です」(石原さん)

大学は、今以上に、社会人となって必要な教養を身につける場になりそうです。

入試改革「恐れないで」、自分に必要な勉強を見極めて

石原さんは、「2025年度入試を過剰に恐れないでほしい」とも話します。2021年度から既に入試改革は進行しています。仮に新入試を挟んで浪人しても、教科や科目の変更に配慮した経過措置があります。科目新設や時間変更に惑わされることなく、「大学で何を学びたいか」「自分に必要な勉強は何か」を自分で考えられるようになることが大切です。