2021年度大学入試は、大学入試センター試験にかわり「大学入学共通テスト」が始まる。記述式問題は見送られたが、マーク式問題の問題構成や出題方針が大きく変わる。どのような力が求められるのか、点差がつくポイントはどこか。河合塾横浜校の校舎長・高野英悟さんに聞いた。(中田宗孝)

問題文の読解力が求められる、時間配分が問われる

―大学入学共通テストは、昨年度までの大学入試センター試験と何が変わるのでしょうか。

大学入学共通テストでは、知識の理解の質を問う問題や、「思考力」「判断力」「表現力」を発揮して解く問題が重視されます。特に思考力と判断力を問われる問題が多くなると予想されます。

思考力が試される問題を解くには、単に知識を丸暗記するのではなく、日ごろの学習において知識を理解した上でそれを整理できていることが必要です。

判断力とは、問題文から必要な情報を読み取り、解答につなげることができる力です。大学入学共通テストでは、生徒の学習場面、社会・日常生活の中から課題を見つけ、解決しようとする場面、資料やデータを基に考察する場面などの場面設定が重視されます。このため、出題文の読解力が求められるようになります。

これまでの入試問題では、「これは解きやすいな」と思った問題を先に解き、「これはてこずるな」という問題は後に回すのが定石でした。ですが、大学入学共通テストでは、出題文を読み込まないと解答できない問題が増え、どの問題から取り掛かるか悩む受験生も出るでしょう。問題に取り組む時間配分に苦戦する受験生が多くなると予想され、どう時間を配分するかの判断力も問われるでしょう。

大学入学共通テストの新しい出題が注目されがちですが、英国数の出題範囲は高校2年生の学習範囲までというのは、センター試験から変わりません。学校の普段の授業をどれだけ自分に定着できるかが受験対策の基本となることも、これまでと同じです。

センター試験と大学入学共通テストの違い

―大学入学共通テストの英語は、センター試験の「筆記」(200点)と「リスニング」(50点)から、「リーディング」(100点)と「リスニング」(100点)に試験の名称が変わります。

大学入学共通テストの中でも、最も大きく出題が変わるのが英語です。

「リスニング」は、配点が50点から100点に変わり、読み上げの回数が、センター試験では全問題2回読みで実施していたのが、1回と2回が混在する形式になります。

注目されるのが「リーディング」です。名称が変わったことに表れていますが、すべての問題が「読解問題」になります。問題文が長くなり、出題者の意図を読み取り、解答の方向性を導き出すことが重要になります。センター試験で出題されていた、英文の空所補充や語句整序、発音・アクセントなどを単独で問う問題は出題されません。

問題文から解答のヒントを見つけられるかで点差

―大学入学共通テストを想定した模試では、どのようなところで点差がつきましたか。

模試では「読解力を要する問題」「日常・社会現象に即した場面設定」「身近なテーマからの出題」「図表・複数の素材を読み取り考察する問題」といった、大学入学共通テストの試行調査(プレテスト)を分析し、その特徴を盛り込んだ問題を出題しました。

点差がついたポイントは、読解力の訓練の有無や、問題文から必要な情報を読み取り、解答につながられているか、本文中にある会話や文章から解答のヒントを見つけられているか、解答に至る過程が複雑なとき、頭の中を整理して、それぞれの段階を一つ一つこなしていけるかどうか、といった点です。

何より大事なのは、知識の理解の質を問い、思考力や判断力などを求める問題作成の方向性に、受験生自らが自覚していることです。

―過去問がない大学入学共通テストに対して、受験生はどんな勉強をすればよいのでしょうか。

試行調査の問題や、出版社や予備校が監修した予想問題をできるだけ多くこなすことです。昨年度のセンター試験の問題も、実は大学入学共通テストを意識した、考えさせる問題が多い傾向がありましたので、これも取り組んでおくとよいでしょう。

高1・2年生は授業で知識の定着から

―高1・2年生が今のうちから受験を見据えてできる学習法はありますか。

まずは今回の大学入学共通テストの出題を確認しましょう。問題を解ける、解けないは今の時点では重視せず、こんな問われ方をするんだというのを認識することが大切です。

そのうえで、大学入学共通テストの問題に準じた、複数の文章や図表資料を読み解く問題に早めに取り組み演習を積み重ねましょう。

とはいえ、「大学入学共通テスト」の予想問題ばかりをやるのではなく、基本は学校での授業で各教科の知識をしっかり定着させることが大切です。先生が授業中に教えた内容を自ら反復したり、説明できるようになることを心掛けてください。

河合塾の大学入試情報サイトKei-Netでは、最新の入試情報を提供し受験生をサポートします。

高野英悟

 

河合塾横浜校校舎長。1989年入塾。駒場校、麹町校、本郷校の校舎長を経て2019年4月より現職。大学入試に関する豊富な知識を持ち、高校などで多数講演を行っている。